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間章  世界

------ トシ視点 ---------------


 おう。適当に座ってくれ。


 ああ。俺の名前をまだ言ってなかったな。トシって呼ばれてる。土方歳三っていうんだが、どうやら発音しにくいらしい。トシのほうが通りがいい。


 すまねぇな。何もないところで。どうせ仮の住まいだ。客をもてなすもんは何も置いてねぇ。


 おっ? ああ。それか? あちこち歩いてきたから、まあ戦利品だ。


 写真やら、貰った土産やら。


 重いもんは断ったけどよ。お守りとか言われたら断れねぇだろ。


 今おめぇが手に持ってんのは、ラオスってぇ国で作られた水牛の細工品だ。俺のために作ったんだとよ。なんだかわからねぇが動物らしい。


 そうだなぁ。まだ見たりねぇが、あちこち歩いたな。


 どこの国も天国っていうわけじゃねぇな。それだけは分かった。


 国によってはこっちが店先に座って物を食べてるだけで、子供がお腹を空かせて寄ってきやがる。金を貰うために、ひっきりなしに小さな弟を泣かせてる女の子もいる。泣き止むと弟をひっぱたくんだよ。そうするとまた泣き始めて、周りの奴が気づくだろ?


 親が物乞いをさせるために、子供の腕や足を折る奴もいる。


 なんだか切ないぜ。


 おっと。わりぃな。そんな話よりも楽しい話のほうがいいよな。


 そうだな。アンコールワットとかどうだ。有名なんだろ? すげぇ古い寺だったぜ。石作りのな。朽ち果てて、そこに木が侵食している。


 結局人間がどうあがいても、最後に勝つのは自然だと言われている気分だったけどな。


 まだ紛争の痕が残っていて、下手なところは歩くなと言われたぜ。ちょっと奥へ入り込むと地雷が残ってるんだと。


 それと現地の乗り物のおっちゃんも、何年か前までこの原っぱで機関銃を抱えて撃っていたなんていうんだ。


 おっとわりぃ。またそんな話になっちまった。




 そうだな。いろんな奴に会ったな。


 子供が普通に働いている国も多い。日本も昔はそうだったけどよ。


 そういう国で学校の先生をやっていたり、医者をやっていたり、技術を教えていたり、そういうのにも会ったな。


 いい奴も居れば悪い奴もいる。それはどの国も一緒だ。




 お? なんだそりゃ。小指立てて。ああ。女か。


 ま…行きずりっぽいのはあったけどな。


 わかったよ。真面目に話しゃぁいいんだろ?




 忘れられねぇ女が一人いる。


 そいつと出会ったが…そいつは自分の信念のために俺から離れた。


 そんな女だから惚れたとも言えるけどな。


 今はどうなったかわからねぇ。死んでるかもしれねぇ。


 俺も一緒に行こうとしたが止められた。



 俺の死ぬ場所はあいつの傍じゃねぇとよ。


 いくら俺が大丈夫だって言っても聞きやしねぇ。


 俺が抱えてる秘密も見せたが、それでも首を縦に振らねぇ。



 結局…俺の隙をついてあいつは行っちまいやがった。




 なんだよ。


 俺の秘密を知りてぇのかよ。




 そうだな。


 おめぇとの仲がもっと深くなったら…教えてやってもいいぜ?




 おっと。電報だ。差出人は、宮月のところにいる金髪のねぇちゃんだな。


 あいつは一体、どうやって俺の居場所を知るんだ?


 なんだ。とうとう俺の仲間が身を固めることにしたらしい。


 日本に帰らねぇとな。




 おう。気が向いたら…またこの国にくるぜ。



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