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第1章  隊士になります(2)

「江戸・・・武蔵の国あたりですね」


そう答えた瞬間に、皆がざわめき出す。あ、そういえば、その辺りが新撰組に縁の地だっけ。日野の新撰組祭と言えば、新鮮組の格好をした人たちが練り歩くパレードで有名なお祭りだ。


「江戸から猫を探して京へ来るたぁ、大概にしろ」


まあ、そう言われるとは思っていたけどね。でもこれは事実だ。僕はもう一つため息をついてみせた。


「じゃあ、いいです」


 僕はトンと、軽く沖田総司の肩を押して、土方歳三のほうに押し出した。沖田総司は手首を痛そうにさすっていた。ごめんね~。かなりしっかり握っていたから、赤くなってるね。そして沖田総司の解放と同時に、周りが剣を構えなおして、その場の雰囲気が変わった。


 でも別に怖いもんないし。そのまま飄々と言葉をつないでいく。


「別に僕たちはここにはこだわりはないし。このまま逃げて、どっかで仕事を探せばいいし…」


「逃がすと思ってるのかよ」


「わからない人ですね。彩乃一人が剣を構えているだけでも、踏み込んでこれないでしょ? 僕まで本気だしたら、あなたたち、死にますよ?」


 黙っている土方歳三に、さらに畳み掛ける。


「いいじゃないですか。ここで仲間に入れて、怪しかったら斬ればいい。または怪我人が出ないうちに、そのまんま逃がしてください。別に見られて困るようなものなんて、僕たちは見てないでしょ?」


 しばらく僕を睨みながら考え込んでいる土方歳三から、僕は視線をはずさなかった。ここではずしたら信用されない。


 そしてしゅーっと刀が鞘に納まる音がした。刀と鞘が擦れ合う音。土方歳三の刀が鞘に納まる。


「いいだろう。俺はお前を信用しちゃいねぇ。お前を監視下に置いて、働いてもらう。それでいいな?」


 にっこりと僕は笑って見せた。周りの男たちも刀を納めていく。僕は彩乃から刀を受け取って沖田総司に手渡した。一瞬、ほんの一瞬、沖田総司は僕のことを睨んだけれど、そのまんま素直に刀を受け取って鞘に納めていった。


「あ、名前、教えてください」


 知ってるんだけどね。でも初対面なのに知ってたらまずいじゃない。


「土方歳三だ」


「どうも」


「こんにちは」


 僕に続いて、彩乃がぺこりと挨拶をする。ついで横に視線を移す。


「沖田総司です」


「永倉新八」


「原田左之助」


「斎藤一」


 それぞれが名前を言うたびに、僕と彩乃はペコリペコリと頭を下げる。

 あれだね。後の新撰組の幹部だね。そして現在の壬生浪士組の中の試衛館一派だ。


「ついてこい」


 土方について、僕たちは蔵から出た。夕方だな~なんて思いながら。


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