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間章  不安(2)

 六月に入ってお兄ちゃんが体調不良でレイラちゃんとどっかへ行ってしまった。レイラちゃんがいるから大丈夫ってみんなが言うから、ちょっと心配だけれど、大学には普通に通う。


 そしてレポートを書くためにライブラリー(図書館)で本を探していたら、冴子ちゃんの匂いがして、本人が現れた。


「彩乃ちゃん」


 冴子ちゃんが手招きするからついていった先は誰もいない談話室。ライブラリーの中で話をしてもOKな場所。


「あのね。彩乃ちゃんに言っておこうと思って」


「え? えっと何を?」


「私、総司さんのこと、好きになっちゃった」


「えっ?」


 目の前のこの人が何を言っているのか、一瞬意味がわからなくて…頭が真っ白になる。


「ごめんね。彩乃ちゃんを迎えにくる総司さんと話をしているうちに、いい人だな~って思ったら、好きになってたの」


「冴子ちゃん? でも総司さんは…」


「うん。知ってる。彩乃ちゃんの彼氏でしょ? でも人を好きになるのに、彼女がいるとか関係ないじゃない?」


 何を言っているのだろう…この人。


「総司さんは…わたしとずっと一緒にいましょうって言ってくれたの。一生わたしを守ってくれるって。わたしも総司さんを守るの」


 わたしが一生懸命、説明しても、冴子ちゃんはにっこりと笑ったままだった。


「うん。彩乃ちゃんはそれでいいんじゃない? 総司さんがどう考えるか分からないし。私、彩乃ちゃんのことも好きだから、自分の気持ちを正直に伝えておこうと思って。これからアタックするけど、もしも彼が私を選んでも怒らないでね」


「そ、そんなことない。総司さんがわたし以外を選ぶなんてないもん」


 思わずぐっと自分で自分の手を握り締めて、冴子ちゃんを見れば、冴子ちゃんがわたしを労わるような表情で見ていた。


「男の人なんてわからないわよ。絶対なんてないもの。あなたより綺麗でかわいい子だって一杯いるし。いつか誰かに取られるなんて、当たり前よ」


 わたし…そんなこと、考えたことなかった。


 総司さんがわたしから離れちゃうなんて…。だって総司さんは、わたしと夫婦めおとになりましょうって言ってくれたもん。


「でも…総司さんは…」


 そう言ったときだった。わたしの耳に総司さんの足音が聞こえた。わたしがライブラリーにいるって伝えてあったから、こっちに迎えにきたみたい。


 凄く嫌。今、総司さんと冴子ちゃんを会わせたくない。


 そう思うのに、総司さんは談話室のドアをあけた。そして首だけ入れて、きょろきょろと誰かを探すように見回してから、わたしと目が合った。


「あ、ここに居た」


 わたしを見たとたんに、嬉しそうに笑う総司さん。いつもなら私も凄く嬉しいのに…。


 どうしよう。どうしよう。


 総司さんと冴子ちゃんを会わせたくないのに、総司さん、来ちゃった。


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