第4章 お留守番(4)
僕らの部屋の前までくると、さっきの縁側に彩乃が座っていた。
「あ、お兄ちゃん…」
あの日以来、なんとなく僕らの関係はギクシャクしている。
前川邸に移ってからの部屋割りは、僕と彩乃が一部屋だ。本当は彩乃だけ…のはずだったのに、彩乃が僕から離れようとしないから、そうなった。
古い価値観のここでは、いい年をした彩乃が僕から離れないのは、驚かれた。しかし僕が唯一の家族っていうことで、なんとなく納まった。
同じ部屋だけど、なんとなく口数が少なくなっていた僕たちで…。
それは夜も一緒で、リリアといてもなんとなく口数が少なくなっていた。
彩乃は僕を見ると泣きそうな顔をした。
「お兄ちゃん、あのね。ごめんね」
「何が」
「あの日のこと。謝りたかったの」
「別に謝ることなんてないでしょ」
「ううん。リリアも謝りたいって」
僕はため息をついて肩をすくめた。
「ホントに。謝ることなんてないよ。僕も悪いことしたし」
二人に…と言い掛けて、言葉を飲み込む。正直、彩乃とリリアは同一人物だと頭では理解しつつ、でも僕の中では二人に分かれていて、どちらかと言えば、彩乃は妹で、リリアは友達みたいな感じでいた。というか、そうだったということに、あの日気づかされた。
でも、昼間の彼女も夜の彼女も、僕の妹だ。
どうしたらいいかわからずに、隣に座って、ぽんと頭をなでる。
いつもは、やめてという彩乃も今日はおとなしく頭をなでられていた。
「今度はリリアにもなでてあげてね」
「うん。そうだね」
最後にぽんと軽く叩いて、立ち上がるとにっこりと微笑みかける。それで彩乃は安心したらしく、笑顔になった。
「さて今日は非番だし、まだ日は高いし、お団子でも食べにいくか?」
「行く!」
そう言ってから彩乃は首をかしげた。僕が好きなあの可愛い仕草だ。
「総司さんも誘っていい? お団子好きなんだって」
総司…いや、たしかに甘党だけど、それが理由じゃないと思うけどねwww
僕は笑いをこらえながら答えた。
「いいんじゃない。みんなで行こう」
「うん! 待ってて」
彩乃はそう言うと総司を探しに行った。
まあ、これで総司の機嫌も直るだろう。




