表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
396/639

第8章  拘束(5)

 本人は分かってないけど、彩乃が泣き叫ぶことで、いい感じに場が盛り上がる。僕の悲壮感が増して、嫌々やっている雰囲気になってくる。


 本当にごめん。彩乃。彩乃には悪いけど、僕は内心で舌なめずりをしていた。こいつらを許すものか。


「そのパワーを使って、君たちは何をする?」


「教主様による世界平和を」


 なんだ、そりゃ?


「混沌時代に、新たな光を」


 あ~。新興宗教系か。思わず脱力しそうになる。


「不老不死にするには儀式がいる。そして…儀式を受けるには本人がこの場にいないとダメだ…。その教主様も…」


 僕は嫌々を装って、重い口調で条件を述べた。男が不審な顔をして僕を見る。


「試しに君たちのうちの誰か一人を、まずは不老不死にしてみればいい。…それで僕の言葉が…本当だって信じられるはずだ」


 そういうと、正面の男は少し思案した後で、僕の後ろにいた一番若く見える男を指差した。


「おまえ」


「えっ」


 指差された男は、一瞬怯えた表情をした。


「お前が実験台になれ」


 逃げようとしたところを、周りの男に掴まれて、僕の前に引き出される。仕方ない。やるか。


「名前は? 本名を正確に教えて」


 男は首を振ったが、周りの男が代わりに答えた。


李亮リー・リャオ


「李亮ね」


 僕は繰り返した。はぁ。欧米人もいるから、どこの国っていうよりも混成チームだね。こりゃ。


「ナイフは…ある?」


 一人がナイフを出した。


「僕の腿のところをちょっと切って」


 本当は自分でやりたいけれど仕方ない。男は遠慮なく僕の腿を切った。思わず顔をしかめる。


「その血を…その男の口に入れて飲み込ませて」


 李は嫌がって首を振ったが、それを押さえつけて周りの人間が口に入れる。飲み込んだのを確認して僕は言った。


「これから言うことを繰り返して」


 長い僕の名前を、儀式に使う正式な真名を繰り返させる。


「その男の腕に軽く傷をつけてから僕の口の前に持ってきて」


 いぶかしげに思いながらも、李亮の腕にナイフを立て、そして傷をつけた。血が滴っていく。そして周りの男たちが、彼の腕を僕の前に持ってきたとたんに、僕はその血を舐め取った。


「---Qui petit a te, da ei; et volenti mutuari a te, ne avertaris.(求めるものには与え、借りようとするものを断ってはならない)」


 僕はラテン語で聖句を唱えた。別になんでもいいんだ。それっぽく、儀式っぽく見えれば。何がキーかということを、できるだけ明かさないために。


 しばらくしたけれど…何も起こらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ