第8章 拘束(4)
身体が復活し始めたらしくて、総司は頭をあげて周りを見回した。
「あ、彩乃…?」
至近距離の彩乃の顔に驚いて、一瞬で身体を離す。一族の血はエネルギー変換率がめちゃくちゃいいらしい。少量で元気になるよね。
「さて、言うことをきいてもらおうか」
その声と同時に、部屋にさらに数人の男たちが入ってきて、僕を取り囲むようにして立つ。僕は正面の男を見据えた。
「その前に教えてくれ。どうして総司に目をつけた?」
目の前の男が鼻で嗤う。
「それはたまたまだ。その男が鉄塔に人間とは思えない跳躍力を駆使して登り、そして羽を広げて飛んで行ったのを見た」
あ~。やっぱりね。その上、飛んだところも見たのか。途中で僕と総司を混同したわけだ。そこは僕の失態だな。僕はため息をついた。
「わかった。…何をどうしたい?」
僕の言葉に、正面の男がにやりと嗤う。
「お前があの男を変えたんだな?」
僕は黙って頷いた。
「我々にも、あの男と同じ不老不死とパワーを」
僕は聞いた瞬間に笑いそうになった。こいつらは馬鹿だ。誰に手を出したか、本当に分かってない。緩む顔の筋肉を必死に押さえつけながら、僕は悲壮な面持ちで言った。
「それはできない…」
とたんに右頬に痛みが走った。殴られたけど、この程度なら痛くも痒くもない。
「お前たちがそんなものを手に入れたら、どうなるか…」
そう言った瞬間に、轟音と共に足の甲に灼熱の痛みが走った。足を撃ってきたわけだ。さすがに撃たれれば痛い。思わず身体が波打ったに従って、僕を縛っている鎖がジャラリと音を立てる。
「次に拒否したら、肩を撃つ」
僕はあえぐように、言葉を搾り出した。
「断る。黙って僕らを解放しろ」
ガウンと銃の音がして右肩に焼けるような痛みが走る。紅く血しぶきが噴出した。
「お兄ちゃん!」
彩乃が叫ぶ。その瞬間に、銃は彩乃のほうを向いた。
「お前が協力しないなら、次は妹を撃つ」
思わず殺気を出しそうになって、無理やり押し殺す。彩乃は僕にとっての弱点だけど、それを相手に意識させるのはまずい。僕はどれだけ撃たれてもいいけどね。ぎりぎりと歯噛みしそうな自分の感情を押し殺して、口を開いた。
「わかった…協力する」
銃口が下を向いた。そして僕はのろのろと相手に聞こえるように呟いた。
「それで…あの二人を解放してくれるなら…」
「お兄ちゃん…」
彩乃が涙声で僕を呼びながら、力なく膝をつく。彩乃を泣かせていることに胸が痛んだ。




