第4章 お留守番(2)
そーっと襖を開けると、総司の肩を永倉がポンと叩くところだった。その後ろに平助もいて、またポンと肩を叩く。そう思ったら、隣の部屋から左之も出てきた。どうやら僕らの隣の部屋は平助なんだけど、そこに三人ともいたらしい。左之まで、総司の肩をポンと叩く。
みんな聞いてたんだね~。
僕も総司の肩を叩こうと手を伸ばした。
「俊には慰められたくないです…」
ぼそりと総司が言う。
「いやいや、代わりに慰めてあげるよ~」
そういって、総司の肩を叩く代わりにハグをしたら、総司にポコリと殴られた。
「みんな、そんなに暇だったら稽古しましょう! はい、俊。行きますよ」
えっ! って思ったときには、腕をとられていて、ずるずると引きずられている。
うわ~、ちょっと待って~って思って、平助たちを見ると、みんなニヤニヤしながらこっちを見ていた。
見送るな。見送るなよ~と騒ぐが、三人とも来ないし、総司は足を止めない。
「だいたいね、先日だって、刀抜くのが遅すぎ。まともに刀が抜けなかったら、命落としますよ」
総司は怒った口調でそういうけど…いやいや、絶対に僕のためっていうよりは、憂さ晴らしだから、今からの稽古。
道場まで引きずられていくと、そのまんま木刀を持たされる。
竹刀ですらない…。まあ、真剣じゃないだけマシか。
「行きますよ!」
そういったとたんに、総司が打ち込んできた。
本気だよ~。これ。
総司と打ち合うのは、あの入隊試験の日以来だ。
右・左・右・左と小気味よく切り返しが続く。ホント、人間にしちゃ、総司の運動神経はいい。
たまに上腰を狙われて、それは刀を身体に沿わせて返す。
何度も繰り返していると、いい加減めんどくさくなってきた。
さすがに朝稽古のときに相手となるようなメンバーたちと違って、総司の剣はあちこち狙うし、バリエーションが豊かだし、気が抜けない。
でもその分、全部木刀で受けるのがめんどくさい。
避けられないこともないけど、総司のスピードに対して避け続けるのもまずいかな~って思うし。総司も憂さ晴らしだったら、打ち込みたいでしょ。
かといって打たれれば痛いから嫌だし。
朝稽古のときには、相手もへなちょこだから、力が入ってなさそうなのを見計らって、適当に打たれとくんだけどさ。
総司のは無理だよ。これ、すっごく痛そうだもん。
あはは。我ながら軟弱者。




