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第7章  視線(9)

 とっさに開いたばかりの扉に、総司を肩に乗せたまま身を隠す。


 そして駆け寄ってきた相手の足がドアの下に見えたとたんに、思いっきりドアに体当たりした。


「うわっ」


 ドゴンというドアが当たる音と、相手がひるんだ気配。その隙にドアから出て、ドアの影にいた奴に思いっきり回し蹴りを食らわせる。


 うわ~。なんか…めきって音がした。あばら骨かなんか…折れたかも。ま、いっか。総司を浚った奴に情けはいらないよね。うん。


 総司を肩に担いだまま、寝転がっている欧米人をもう一回足蹴りする。彩乃には見せたくないね。こういうところは。そして気絶したところで手早く身体を探ったけれど、運転席にいた奴同様、身元を特定できるようなものは持っていなかった。


 総司を車まで運んで乗せて、ちらりと後ろを見る。トラックのプレートナンバーを記憶してから、車を発進させた。


 逃げるが勝ち。だよね?


 行きと同様に首都高を使ったが、相当荒い運転だったのは自覚している。仮に尾行している車があったとしても、ついて来るのは難しかっただろう。


 家について、また荷物のように総司を担いで、彩乃のベッドへと運び込んだ。


「総司、総司」


 呼びかけても目を覚まさない。


 身体を揺すって、ふっと見れば首筋に針のようなものが刺さっていた。力を入れて抜くと、先から液体がこぼれる。


「これって…麻酔?」


 レイラに見せれば、レイラが眉を顰める。


「それっぽい。匂いもそんな感じだし」


「レイラ、悪いけど今から言うトラックの持ち主を調べて」


 僕はあのトラックのプレートナンバーを告げる。レイラは頷いてすぐにダイニングに下りていった。彩乃は総司の傍で心配そうに総司を見守っている。


「大丈夫だよ。気を失っているだけだから、じきに気付くよ」


 僕がそう言えば、彩乃はこくんと頷いて総司の手を握った。





 どこのどいつがこんなことをしているか分からない。だけれど何故、総司? 彼を誘拐する目的は何?


 自分で言うのもなんだけど、この教会の外見は貧乏だ。いや、実際に会計報告も毎回赤字ぎりぎり。牧師の月給もそんなに多くない。ちょっとお金に余裕が出ると、すぐに奉仕活動費や募金や寄付に回してしまう。


 傍から見れば僕らの生活は質素だ。ほとんど外食しないし、食材だってそんなに買わない。娯楽費にお金をかけるわけでもない。車も安い中古のファミリーカーだし。家は数年前に立て替えたけど、それでも東京では普通の家だ。1階がリビングとダイニングと風呂場。2階に3部屋。僕たちそれぞれの部屋があって終わり。


 これで金目当てだったら手が込みすぎている。僕のことを調べない限り、金の線はない。そして僕のことを調べたら、多分狙われるのは総司じゃなくて彩乃だ。僕が昔から妹を大切にしていることは、僕たちを知る誰もが知っているからね。


 まあ、総司のことも大事にはしているけどさ。でも人質にするために誘拐するとして、総司と彩乃だったら、普通は女の子である彩乃だよね。


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