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第7章  視線(8)

 景色はどんどん幾何学的になっていく。こういうデザインの何がいいんだか、海沿いになればなるほど建物が四角になって、そして緑がなくなり、コンクリートだけで覆われる。


 空気に汐の匂いが混ざり始めて、そしてコンクリートが砕かれた粉っぽい香りも混じってきた。


 総司はどうやら移動をやめたらしい。この辺り…そう思いながら湾岸線を降りて、一般道に入る。一般道だとそんなに車を飛ばせないのが本当に痛い。だが飛行機に乗らなかっただけでも儲けものだ。こんなところで何をしているんだろうか。


 果たして。総司がいると思われた場所は倉庫と倉庫の間。トラックが一台止められている。僕はそこに向かって歩いていった。倉庫の中にいるのか、それともトラックか。居場所センサーはあまり精密なものではないけれど、移動していた速度を考えればトラックだろう。


 耳を澄ませば、荷台から聞こえる呼吸音。ビンゴ。運転席には一人の男。周りには誰もいない。運転席の男は何かを待っているようだった。


 運転席側のドアにそっと手をかければ、鍵が開いていた。そのまま一瞬で身体を滑り込ませて、男の首筋に手刀を打ち込み昏倒させる。人間相手にこの程度のことは朝飯前だ。とりあえずはこれでよし。


 荷台を開けようとトラックの後ろに回れば南京錠。運転席にいた男の身体を探ったし、ダッシュボードも探ったけれど鍵がない。手で壊すとか無理だな。しまったな~。彩乃を連れてくるんだった。


 僕は仕方なく軽く数回ジャンプすると、全身の力を解放してトラックのドアに蹴りを入れた。がちっとドアが歪むけれど、開く気配はない。


 二回、三回と何回も繰り返すうちに、だんだんとドアの蝶番が壊れ始めて…ようやく開いた。


 ぐったりとした総司が荷台に乗っている。呼吸があるから生きているけれど、これだけ煩くしたのに起きる様子はない。ぴくりとも動かない。ぱちぱちと数回頬を叩いてみたけれど無駄だった。


 仕方ない。状況がよく分からないが、とりあえずは総司を連れて返ったほうがいいだろう。移動しようとして総司を荷物のように肩に乗せたときだった。


 誰かが近づいてくる音がした。


 総司に構っている間にかなり近くまできてしまっていた。まずい。総司を肩に担いでいる分、動きが取れない。荷台は空っぽで、隠れる場所はない。そういや僕の車のトラックの傍においたままだ。間抜けすぎる。総司を降ろしている間に、音をさせた誰かは傍まで来てしまうだろう。


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