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間章  欲しいもの

-------- 斉藤視点------


市を冷やかして屯所へと戻る道を歩き始めると、見覚えのある背中が見えた。


「沖田さん」


 声をかければ、振り向いたのは見慣れた顔だ。


「斉藤さん。斉藤さんも非番でしたか」


「ああ。ちょっと野暮用があった。沖田さんは?」


「あはは。私もです。ちょっと刀を見に行ってきたんです」


「刀か」


「ええ。もう少し尺(長さ)が欲しいんですよ。先立つものが無いので、今は見るだけですが」


 お互いに思いは同じだ。俺も良い刀が欲しいとは思うが、先立つものがない。連れ立って歩きながら、いつかは良い刀を手に入れたいものだと思う。


「沖田さんは、どんな刀が好みだ」


 ふと尋ねれば、少し考えるようにしてから応えがあった。


「すっきりしたのがいいですね。反りは浅めで、刃文は直刃(すぐは)(まっすぐな刃文)がいいでしょうか」


 突きが得意な沖田さんらしい選択に、俺は思わずにやりと笑った。


「そういう斉藤さんは、いかがですか?」


「そうだな…」


 問われて、少しばかり考える。


「俺はある程度反りがあるほうがいい」


「刃文や地鉄ぢがねの好みはいかがですか」


「直刃よりも丁子や互の目(ぐのめ)の乱れがいい」


「意外に派手好きですね。では地鉄も板目がお好みではないですか?」


「ああ。そういう沖田さんは柾目(まさめ)か?」


 俺の指摘に沖田さんは僅かに笑みを浮かべた。


「まあそうですね。あまり地鉄にはこだわりはありませんが」


 まるで自分だけはあまりこだわっていないのだというような口ぶりだ。ここまでこだわっておいて、それはないだろう。


「俺も見た目は、まあいい」


 俺がそういうと、おや? という顔を沖田さんがした。


「見た目よりも、手になじむ刀がいい。贅沢を言うなら応仁(1467年~1469年)あたりまでの刀が欲しい」


 俺の言葉に沖田さんが俺を見る。先を促すような視線に俺は続けた。


「聞いた話だが、応仁あたりまでの刀とその後の刀では鉄が違うらしい」


 沖田さんが大きく頷いた。


「私も聞いたことがあります。寛永(1624年~1645年)あたりでも変わるらしいですよ」


「古ければいいというわけではないが、鉄が違うと折れにくいとも言う」


「そうですね」


 沖田さんは応えてから、ふっと笑った。


「まあ、折らなければいいんですよ。刃筋を通せば折れません」


 言ってくれる。


「そうだな」


 先立つものがなければ、ここで言い合っているのは夢物語だ。だがいつか名を揚げることができれば、刀も自ずと手に入るだろう。


 そうこうするうちに屯所が見えてきた。今は狭い場所だが、そのうちにここから俺たちは国中に名を轟かせる存在になるはずだ。


 いつかは。



二人が話していた刀の部分については、下手な絵なんですが以下のとおりです。

挿絵(By みてみん)

切る部分の模様と刀の地模様についての会話なのでした。その後、二人が使用したといわれる加州清光(一般的に加州清光は互の目が多いようなのですが、沖田総司が使った刀は直刃らしいですね)や、鬼神丸国重を参考にしています。実際、国宝級の刀を見ると本当に刃文や地鉄が綺麗ですよ~。特に地鉄は知っていて見ないと見落とします。刀を見る機会があったらぜひみてください。

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