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間章  旅行 1日目(2)

 結局、二人で行きたいということも、行く場所も打ち明けた。お兄ちゃんはわたしの話に腕を組んで聞いていて、総司さんはおろおろとしていて、どうしようって思ったら、お兄ちゃんはあっさりと言った。


「行ってくれば。新撰組の跡地を見たいんでしょ」


「う、うん」


 それだけじゃないけど…。多分…って、そんなことを考えちゃいけないかな。


「きちんと日程決めて、費用の計算して。二人にお金を貸してあげる」


「え?」


 聞き返したわたしにお兄ちゃんが、にっと笑う。


「行くなら自分たちのお金で行きなさい。だから貸すだけだよ。いつか返して」


 総司さんと二人で顔を見合わせてから、声をそろえて「はいっ」って返事した。




 それで二人で行く場所と泊まる場所と、移動手段を考えて、お金の計算もして…。これはこれで総司さんの勉強になったみたいだし、わたしも凄く楽しかったの。




 京都駅についたわたしたち。総司さんは駅前のタワーを見上げてため息をついた。


「想像はしていましたから驚きませんけど…凄い違いですね」


「そうですね」


 わたしも駅前を見回した。前に来ているはずだけど、京の印象のほうが強くて、あまりにも街がごちゃごちゃしてしまって、悲しかった。


「じゃあ、行きましょうか」


 ひょいっと総司さんが二人分の荷物を持つ。


「あ、自分で持ちます」


 そう言ったけど、総司さんは軽々と二つ持ったまま笑った。


「良いですよ。このぐらい軽いものです。まずはタクシーを使ってホテルにチェックインしましょう」


「え?」


 ホテルのチェックイン時間は遅めだから、最初は駅のロッカーに荷物を入れてあちこち回る予定だったのに…。わたしが首をかしげると、総司さんはスタスタと歩いてタクシー乗り場に向かう。


「大丈夫ですよ。ホテルで荷物を預かってくれるので。そのほうがタクシーを利用してもロッカー代が浮いた分、おつりが来ます」


 そう言って総司さんはタクシーに乗り込んだ。


「いつの間に、そんなことを調べていたんですか?」


 そう言うと総司さんが、照れたように笑った。


「実は…内緒にしておけって言われたんですけど、俊に教えてもらったんです」


「はい?」


「彩乃さんを、えっと、エスカレーター…じゃなくて…えっと、エスコートでしたっけ? できるようにって」


 そして総司さんはすぐにタクシーの中で行き先を告げる。まったく普通の動きで…なんか凄くびっくりした。



 ホテルについて、普通に総司さんがチェックインして。


 きっとわたしがしないと総司さんは出来ないだろうなって思ってたのに、総司さんが率先して荷物を預けてくれる。一体どこでそんなことを覚えたんだろうって思うけど…答えは一つしかないよね。


 お兄ちゃんと練習したのかな。そんなことを想像すると笑っちゃうけど、なんか総司さんのカッコいい動きの後ろに、お兄ちゃんの努力があるかと思うと、二人から大事にされているのが感じられて凄く嬉しい。


「さあ、行きましょうか」


 そう言って総司さんとわたしは京の街を歩きだした。


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