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第5章  牽制? 威嚇?(12)

 それからヤナセくんが来た数日後、僕が買い物から戻ってきたら、家の中から楽しそうな声が響いてきた。


「ねっ! ねっ! 彩乃っ!」


「そうだよ。白状しようよ」


 女の子たちの声がリビングから響く。僕が顔を出すとソファに座って彩乃を囲んでいて女の子が三人、立ち上がって挨拶をしてきた。


「こんにちは!」

「お邪魔してま~す」

「ご無沙汰してまーす」


 名前は忘れちゃったけど、彩乃の高校のときに仲の良かった友達だ。うちにも何回か遊びに来てる。


「やあ、いらっしゃい」


 ちらりとテーブルの上を見れば、お菓子が山盛りになっていた。うちにはスナック菓子の類はないから、買ってきたんだろう。


 総司の姿がダイニングにもないから、自分の部屋に引っ込んだかな? 女の子たちはパワフルだからね。


「彩乃ちゃんのお兄さん! お兄さんは知ってます? 彩乃ちゃんと総司さんがどうやって付き合ったか」


 一人が僕を期待の目で見る。彩乃は困ったような顔をしていた。


 やれやれ。そんなの上手く言って逃げちゃえばいいのに。ま、そこができないのが彩乃の素直でいいところだけどね。


「知ってるよ」


 そう言えば、三人の視線が僕に集まった。


「教えてくださいっ! 彩乃ちゃん、彩乃ちゃんの先生っていうぐらいで、内緒にするんです」


 内緒っていうか、どう説明していいか分からないんだろう。ちらりと彩乃を見れば、すがるような目で僕を見る。


「ああ。総司は僕と彩乃の剣の先生。剣道じゃなくて居合とか剣術って呼ばれるほうだね。本物の剣を使うんだよ。で、総司と僕は友達で、僕が総司に習うときに彩乃も一緒に習った」


「へぇ」「すごい」という声が漏れる。


「それで、習っているうちに総司が彩乃を好きになったんだけど、彩乃だから…全然気付いてなくてさ」


「彩乃ちゃんらしいっ!」


 笑い声が起こって、彩乃が頬を染める。


「じれた総司が彩乃にはっきりと告白したみたい」


 はっきり聞いたけどね。この耳で。でもまあ、一応伝聞調にしておく。


「総司さん、今は一緒に住んでるんですよね?」


「ああ。そうだよ。総司が前に居たところは住んでいられなくなったんだ。だから連れてきた。ここには余分に部屋があったしね」


 ほーら。嘘は言わなくても、綺麗に現代の話になった。彩乃の視線が、呆れたようなものに変わっている。僕はひょいっと肩をすくめてみせた。


「僕が知ってるのは、こんなところ。あとは…どうやって総司が口説いたか…とかは、彩乃に聞いて」


 そう彩乃にふれば、彩乃が慌てたように僕を見た。


「お、お兄ちゃんっ!」


 思わず笑ってみせる。


「ま、彩乃が話してくれるかどうかは知らないけど」


 とたんに友達の視線が僕から彩乃に戻った。


 まあ、総司からの口説き文句は、時代に関係ないから、話したければ話せばいいし、話したくなければ内緒でもいいんじゃないかな。


 僕は買ってきたものを冷蔵庫に入れてから、女の子たちに「ごゆっくり」と声をかけて二階に上がった。


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