第5章 牽制? 威嚇?(2)
分からない言葉があったら、訊いて、すぐにメモを取る。それで見返す。僕が言ったことを総司は素直に実践していた。
筆ペンを使って縦書きでメモを取っているから、ちらりと見るとなんか凄いことが書いてありそうに見えるけど、実態は「シャワー」とか「パフェ」とか書いてあって、本人は真面目な分、僕から見ると…えっと…コメントは控えるよwww
「それで明日が飲み会?」
「うん。新歓コンパだって」
総司が「えっと…」と言い出したので、僕はすかさず言葉の説明をした。まあ、あまり覚えなくていい言葉だと思うけど。
「じゃあ、夕飯いらないね」
「うん…」
何か彩乃が乗り気じゃない。
「どうした?」
僕が訊けば、彩乃が浮かない顔をして僕を見る。
「なんかね…すぐにわたしの傍にくる人がいるの」
「男?」
「うん。彼氏がいるかって訊かれたから『いる』って言ったし、友達も総司さんの話をしてくれたんだけど、でもなんかすぐ傍にくるの」
「じゃあ、その新歓…えっと…コンパ、行かなければいいんじゃないですか?」
総司が言うが、彩乃としてはその人は嫌だけれど、新歓だからこそ出たいという気持ちもあるんだろう。返事を出来ずに視線がさまよう。
僕はため息をついた。
「とりあえず、出るなら女の子の横に座りなさい」
「うん…」
「終わる時間は何時?」
彩乃がぱっと顔を上げた。
「えっと…多分10時ぐらい」
「じゃあ、迎えに行ってあげるから」
「ほんと?」
「どこでやるの?」
「大学の傍なの。お店と場所、教えるね」
彩乃がにっこり笑った。
「ありがとう。お兄ちゃん。もしも帰るときについてきたら嫌だなって思ってたの」
それぐらいは意識するようになったんだ。
ある意味、彩乃としては凄い進歩だと思う。別についてきても、彩乃のほうが強いと思うし、何かあるわけじゃないと思うけど、女の子として成長したというか…。
僕はちらりと総司を見た。
ま、総司のおかげというべきか…。
総司はまだ眉を寄せたままだ。出ないでって言いたいけれど、束縛したら嫌われるって僕が言うし、心の中の葛藤…というところだろう。
はぁ。まったく世話が焼けるよ。




