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第5章  牽制? 威嚇?(1)

 夕食後の時間、ダイニングでは彩乃と総司がそれぞれの勉強をやっていた。


 彩乃は大学の授業での課題。英語の本を読んで大事なところに線を引いてこいと言われたらしく、ピンクや黄色の蛍光ペンが机の上に転がっている。


 総司は僕が買ってきた小学生のための算数の問題集を解いている。まだ算用数字…いわゆる現代で使われている数字を書くことに慣れていないから、計算するのも大変だ。


 そして僕はダイニングにくっついているリビングの二人用ソファに寝転がって本を読んでいた。



 

 プルルルとリビングの電話が鳴る。昼間は教会の用事で鳴らす人が多いけれど、この時間は珍しい。


「はい。宮月です」


 と僕が出れば、若い男の声が電話口から聞こえた。


 彩乃は携帯を持っているけれど、どうやら携帯が微妙な音を出してるらしくて、すぐに電源を切って携帯しない。僕には聞こえないんだけどね。


とにかく、彩乃が携帯の電源を入れないことを知ってる友達は、急ぎじゃない用事はメール、それなりに急ぐときには家の電話に連絡してくる。


「彩乃。電話。大学の友人だって」


「あ、うん」


 彩乃が立ち上がって電話口に来る。総司が心配そうな顔をして彩乃を見ていた。


「男ですか?」


「そうだね」


 僕にこっそりと聞いてくるあたり、本当に心配症だ。


 彩乃は電話口で、「うん」とか「わかった」とか言葉少なに返事をして、最後に「ありがとう」と言って切った。


 そして僕を見る。


「明日…サークルの飲み会なんだって」


「ふーん。サークルって、何に入ったの?」


「畑サークル」


「はい?」


 なんだ、それ?


「えっと…。畑を作って、野菜を作って、食べるの」


「どこで」


「大学の中に畑があるの。それで秋に収穫祭って言って、バーベキューするんだって」


 なんだかずいぶん暢気なサークルだ。


「すみません」


 総司が口を挟む。


「サークルってなんですか? あとバーベキューも」


 総司には、分からない言葉は遠慮なくすぐに僕に聞け(ただし人前ではこっそり)って言ってあるから、堂々と聞いてきた。


「サークルっていうのは、同じような趣味の人が集まったものっていう感じかな。同好会って言われたりするけど。この場合は、畑を作りたいって人が集まって、共同で農業やる会ってこと…だよね?」


 と彩乃に確認すれば、彩乃がこくんと頷いた。


「バーベキューって言うのは、料理の一つ。肉や野菜を網焼きにして食べるんだ」


「なるほど」


 総司が現代語の自分用ノートを開いてメモをした。


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