表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
342/639

間章  能力(1)

------------ 総司視点 ---------------------


 自室のベッドに寝転びながら、先ほどの俊との打ち合いを反芻する。前後左右だけではなく、上も下も警戒しなければならない。しかも明らかに私よりも速く仕掛けてくる。


「はぁ」


 思わずため息が出た。あの能力差。あれで本気ではないと言っていた。自分の手を持ち上げて、思わず見る。


 身体が軽くなり、どんな動きでもできる気がした。もともと並の者には遅れを取らないだけの腕はあると自負していたが、今の身体はあの時代のどんなものにも負ける気がしない。ただし俊以外は。


 あの俊敏さ、剣筋の見切り方。運動能力が向上したとしても、並大抵のものではない。あれは実戦でしか培われない感覚を駆使しているとしか思えない。それともあの動きも含めて一族だからだろうか。


 あの動きに近づきたい。いや、近づくだけでは満足できない。互角に戦いたい。できれば勝ちたい。


 身体が疼く。大人しく寝ていることなど出来そうにない。


 起き上がると、部屋の隅に残しておいた木刀を持って教会堂へと移動する。彩乃と二人で元に戻した椅子を、再び移動させて場所を作った。


 俊の動きをイメージしながら、木刀を振る。


 前へ、後ろへ。頭上へも突きを放つ。ふと気づいて力を入れて飛び上がってみる。


「うわっ」


 思い切り飛んだら、人間の比ではないくらいの高さまで飛んだ。この身体…どこまで動くのだろうか。


「総司さん?」


 振り向けば、私と同じような部屋着…すうぇっと姿の彩乃さんが立っていた。


「何をしているんですか?」


 思わず手にした木刀に視線をやる。


「稽古を…」


「稽古? こんな夜中にですか?」


 彩乃さんが首を傾げる。そこで私は先ほどの俊との打ち合いの話をした。とたんに彩乃さんがポンと手を打つ。


「お兄ちゃん、強いですよ。一族の中でも相当強いって聞いたことがあります」


「納得です」


 彩乃さんの視線が、私の後ろへと流れる。なんとなく掴んできてしまった、もう一本の木刀がある。


「お相手しましょうか? わたしではお兄ちゃんほどは無理ですけど」


「しかし…」


 思わず口ごもった私に対して、彩乃さんが普段は見せないような勝気な笑みを見せた。


「わたしも一族ですよ? それにわたし、お兄ちゃんよりも筋力があるので、スピードは速いです」


「あ」


 そうであった。忘れそうになるが、彼女も一族であり、私よりも力の使い方は心得ているはずだ。ここは素直に頼むべきだろう。


「お願いします」


 私が頭を下げると、彩乃さんも頭を下げる。


「こちらこそお願いします」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ