第3章 新たな出会い(6)
隣では総司が数人を軽々となぎ払ったところだった。
こいつ、本当に剣を持たせると別人。
後ろから斬りかかってきた敵も、見えているかのごとく刀の峰で受けると、身体を回転させながら、そのままくるりと頭の上で刃を一閃させて、相手を袈裟斬りにする。
実際、一緒に見回りしている殆どのメンバーは、こういう事態になれていないらしく、半分パニックになっていた。無意味に敵に対して刀を振り回している。
総司だけが落ち着いて敵を斬り伏せていた。
ふっと総司と僕の間で、彩乃が顔面蒼白になっていることに気づいた。
彩乃の目が赤くなっていくのが分かる。
恐怖じゃない。血に反応してるんだ。
「彩乃。あの角で隠れてて」
戦っているそばの家と家の隙間を指し示す。
彩乃は頷いたのを見て、僕は道を空けるべく、彩乃の傍にいる敵に向かいあうようにして細身の剣を抜いた。
フェンシングの要領で肩とか足を刺していく。致命傷は与えないように。
その隙に彩乃はうまく抜け出した。
…しかし。なんてやつらだよ。刺しただけじゃ、全然倒れてくれない。
びっくりして一瞬動くのを止めるんだけど、それで終わりだ。あまり痛くないのかなぁ。切れ味が良すぎる刀っていうのも考えものだな。
ふっと彩乃のほうを見ると、飢えたような表情でこっちを伺っている。ちょうど影になってるから見えにくいけど、昼間だから。無防備すぎる…。
そっちを見る余裕があるやつがいなさそうなのが良かったけど。
仕方なく僕は細い剣を鞘に収めて、もう一本を抜き出した。
ちょうど総司に後ろから斬りかかろうとしているやつが目に入る。総司は目の前の敵を二人相手にしていて、後ろの敵に気づいていないのか、余力がないのか。
ごめんね~と心の中で謝って、僕は力任せに敵の右手を切り落とした。
酷い悲鳴が上がる中、すばやく地面に落ちた右手を掴んで、彩乃がいる建物の影に投げ込む。これでとりあえず血の渇きは凌げるだろう。
目の端で見ると、彩乃の手が伸びて、腕を拾うところが見えた。
敵の悲鳴に総司が振り返り、相手を袈裟に切る。振り返った隙に切りかかってきた目前の敵は、次の瞬間に鳩尾に刃が飲みこまれていた。
瞬間的に身体を回転させたんだな。たいした反射神経だ。
そんなことを見ていたら、目の前がいきなり血に染まった。
何が起こったかわからずに、一瞬びくりと身体が反応したとたんに、重いものがこちらに向かって倒れ掛かってくる。
慌てて抱きかかえると、首から上がなくなった死体だった。
僕は首からの血しぶきを浴びていた。思わず舌なめずりをしそうになって、必死で止める。
噴出している紅の血の向こうに見えたのは、今斬ったばかりの刀を下げた斉藤だった。
「よそ見をするな」
そういうと、身体の向きを変えて、すぐさま総司が相手をしていたもう一人に斬りつける。
「斉藤さん、来てくれたんですか」
総司がほっとした声で言うのが聞こえた。
全身に浴びた血のせいで、何も考えられなくなりそうになったのを、必死でつなぎとめる。
血を浴びる直前も、今も僕に向かっての殺気は感じなかった。感じていたら、さすがに僕もむざむざと敵に斬りつけられるのを許しはしない。
何が起こったのかわからないうちに戦いは終わった。




