第3章 七歳にして男女席を…同席?!(9)
がばりと総司が車のシートから起き上がった。勢いがあったせいで車ごと揺れる。何事かと思えば、真剣に僕を見る総司の瞳と目があった。
「そういえば…俊」
「何」
「尻尾…あるんですよね?」
え? 今それ? おーい。結構感動的な話をしたと思ったのに、そこに行くわけ?
「いや…あるけど…」
「普段、どうしてるんです? そういえば、羽もありましたよね?」
「ああ、翼ね。うん。あるよ。両方ともしまってある」
「えっ! しまえるものなんですか?」
「しまえなかったら、出しっぱなしになるじゃない。僕が人間に見えないでしょ」
僕は眉を顰めた。
「いや…そうなんですけど…どうやってしまっているのかと思いまして」
「企業秘密だよ」
「は?」
「ナイショ」
そして唐突に思い出す。一度翼を広げた後で、上手くしまえてないことに気付かずに、斉藤に背中を触られたことがあった。
あれは焦った。直接翼に触られることはあまりないから、かなりびっくりした。結構敏感なんだよね。翼の部分って。
「今度、見せてください」
「嫌だよ。何が悲しくて、男にそんなものを見せないといけないわけ?」
「女だったらいいんですか?」
僕は一瞬考えこんだ。女だったらいいかな? うーん。マジマジと見られるのはやっぱり嫌かな。
「どっちも嫌だ。必要がないのに見せるのは御免だね」
「じゃあ、必要になってください」
僕は吹き出した。
「そんなに見たいわけ?」
「見たいです。見たことがないものは見たいですよ」
「目の前で広げて見せたじゃない」
「あのときはゆっくり見ることができませんでした」
そりゃそうだ。
「そのうちにね」
そう答えたところで、彩乃から連絡が来た。
帰り道、総司はそのまま初の助手席で、後ろのシートに彩乃を乗せて僕らは帰宅した。
総司のコンプレックスは…打ち消すには、まだしばらくかかるだろうね。ま、総司だし。なんとかなるでしょ。




