第3章 新たな出会い(4)
僕は刀を抱きかかえると、屯所に戻るべく歩き出した。
かなり暗いな~と思っていたら、門限を過ぎていたらしい。屯所の門が閉められている。
誰かを呼び出して開けてもらう気もせず、きょろきょろと周りを見回してから人気がないことを確認すると、ポンと屋根に飛び乗った。幸い闇夜だ。見つかる恐れはないだろう。
そのまま屋根伝いに端まで行って、軽く飛び降りる。
うん。これくらいは朝飯前…。
と思った瞬間に、首筋に冷たいものが突きつけられた。
首を動かさずに目だけで見ると、刀の切っ先が後ろから突きつけられている。
「何をしている」
地を這うような低い声が響いてきた。
不覚。きちんと確認せずに飛び降りてしまった。
思わず反射的に身体が動きそうになるのを押さえつけながら、そぉっと身体を動かして、後ろに立つ相手に向き直った。
敵意がないことを示すために、にへらと笑って見せる。
「斉藤」
そう呼ぶと、彼は暗闇の中で顔をしかめて見せた。
どうやら声で僕だと分かったらしい。
それでも刀は突きつけられたままだ。
「いや~。知り合いのところに行ったら、遅くなっちゃって、門が閉まっちゃったんだよね~。だから乗り越えてきたんだよ」
とりあえずそう答えて様子を見た。
警戒している雰囲気は感じるが、殺気はない。
「いい剣をもらったんだ。明日、稽古のときに見せるよ。だから門限破りは黙っておいてくれるかなぁ」
ヘラヘラと笑いを含んだ邪気のない声で言うと、ようやく首筋に当てられていた刀が消えて、しゅっと納刀する音がした。
「気をつけろ。もうちょっとで盗人か不逞浪士かと思って殺すところだったぞ」
「うわっ。こわっ。冗談!」
斉藤のため息が聞こえてくる。
「本気だ」
うん。分かってる。だから僕も危なかったよ。
君を殺しちゃうところだった。
「気をつけるよ」
「そうしてくれ」
そういうと斉藤は自分の部屋のほうへ歩いていった。
本当に気をつけるよ。
僕には僕がうまく制御できない部分があるから。
だから、気をつけるよ。




