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第3章  七歳にして男女席を…同席?!(4)

 家から車で30分程度、電車やバスでも一時間程度で通える彩乃が今日入学する大学は、語学教育とキリスト教教育が盛んなことで有名な私立大学で、木々が多くて広いキャンパスの雰囲気がどこか僕の母校に似ていた。



 車を大学内の駐車場に止めて入学式が行われる教会に入る。保護者席は後ろだ。彩乃は小さく手を振って、新入生に指定された席に小走りで向かっていった。


「総司、ここ座るよ」


 総司がきょろきょろと辺りを見回す。


「本当に女性が…足を出していますね」


「だから言ったでしょ。っていうか、買い物行ったときにも出している人がいたけど、気付かなかった?」


「それどころじゃありませんでした」


 まあ、そうかもね。


 端っこだけれど彩乃が見える位置を確保して、総司と一緒に座る。そのとたんに式の始まりを告げるアナウンスが日本語と英語で流れた。


「何語ですか?」


 総司がこそりと僕にささやく。


「英語。えげれすの言葉だよ。日本語と同じことを英語で言ってる」


 式典も日本語と英語で進んでいった。しかも校歌が流れたんだけど、これも英語。


「俊」


「何?」


「彩乃さんの隣…男に見えます」


「うん。男だね」


 総司が立ち上がりそうになったのを、慌てて僕は押さえつけた。


「なんで男が一緒に座ってるんですかっ!」


 一応声は抑えているけれど、勢いはそのままに総司が僕に言う。


「普通だよ。男女平等。同じように並んで座って、並んで学ぶの」


「えっ? じゃあ、大学っていうのは、男も一緒にいるんですか?」


「いるよ」


 そう言えば『男女七歳にして席を同じうせず』っていうんだよな。昭和の初期ぐらいまでは基本的に男女は別々な教育を受けて、同じ場所にいないのが普通っていう感じだったらしい。


 総司が心配そうな顔で彩乃をじっと見つめる。


「まあ、大丈夫だよ。彩乃に手を出せる男はいないよ」


「でも懸想する男はいますよ」


 総司が断言する。


 僕は肩をすくめた。


「まあ、そうだろうね。でも彩乃は受け入れないよ」


「それはそうですが…」


 僕たちが小声で話をしている間に入学式は終了した。


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