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第2章  現代探訪(5)

「俊、一つ聞いていいですか?」


 総司が青い顔をしたまま、僕に訊いた。


「何?」


「この国は、異国に乗っ取られたのですか?」


「はい?」


 バックミラーで総司の顔を見れば、非常に真面目な顔をして僕を見ている。


「なんで?」


「見える人々が、皆、異人です…」


 総司が口惜しそうに、ポツリと言った。


 僕は車の外に目を走らせたけど、歩道を歩いている人も、車に乗ってる人も、殆どがこの国の人…だと思う。


「総司、なんでそう思ったの?」


「皆、髪の色が…」


 思わず僕は納得した。ハンドルを握っていなかったら、彩乃じゃないけど、ポンと手を叩いていたところだ。


「みんな染めてるんだよ」


「はい?」


「流行なの。少し髪を茶色く染めるのが」


「なんでそんなことするんですか。黒髪が綺麗なのに」


 うーん。なんでだろうねぇ。


「僕もよく分からない。それと総司」


「はい」


「異人という言葉は、もうこの国では使われない」


「え?」


「えっと、日本の外の人という意味で、外国人と呼ばれたりするけど…。その言葉を嫌がる人もいる」


 総司が戸惑ったような表情を見せた。


「平等…っていう考え方が浸透しているんだよ。どこの国の生まれでも関係ない。同じ人間だっていう考え方。まあ、どうしても日本の人じゃないということを言いたいときには、国名に人をつけて呼ぶことはあるけどね。例えばアメリカ人とか」


「アメリカ?」


「めりけん国。黒船ペリーの国」


「はぁ」


 総司はようやく理解したようだ。そういや、国名とかも教えないといけないんだよね。うーん。結構現代の情報量っていうのは膨大だ。


 余談だけれど、人類の歴史というのは過去の歴史の積み重ねだ。過去の人々が経験から学んだことを後世に残し、それをベースにして現代の学問というのが成り立っている。


 例えば数学一つとっても、どうやって計算するかというところから昔の人は考えないといけなかった。まずは数字を使うことを発明し、式で表して計算することを考えだした。次にそれをベースにして方程式を発見し、そして現代に至る。この間にものすごい長い時間が経っている。


 教科書に載っていること一つとっても、その知識を得るまでに、人間はどれだけ膨大な時間を費やしたんだろうと思うと、頭が下がるよ。


 まあ、とにかく。過去よりも未来のほうが情報量は多いはずなんだよね。


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