第2章 現代探訪(4)
フレンチトーストのバターの香りに誘われるように彩乃が起きてきて、朝食が始まった。
「うーん。なんか朝食という気がしません。ふわふわしていて…」
総司は文句を言いながらも、手は止まらずにフレンチトーストの上にジャムをつけては、小さくして口に運んでいく。まだナイフとフォークの使い方がたどたどしいが、なんとか使えているようだ。ナイフの先端から一センチ程度のところを『ここが物打ちで、ここで切るように使う』と説明したら、理解してくれた(笑)
「これも苦くて…なんか変な味です」
「ああ、コーヒーね。でも牛乳と砂糖が入ってるから、なんとか飲めるでしょ?」
「牛乳…なんか生臭いというか、動物臭いというか…」
「そりゃ、牛の乳だからね。動物臭いよ」
僕はすました顔をしてコーヒーを飲む。僕はブラック。彩乃と総司は砂糖が入ったカフェオレだ。
「食事が終わったら、買い物だからね」
「買い物?」
彩乃が首をかしげる。
「総司の洋服が必要でしょ」
和装だったらあまり関係ないけれど、洋装の場合には細かいサイズ合わせが必要で…。総司より僕のほうの背が高いんだよね。実は。
僕が持っている洋服から、裾に金具がついていて長さ調節ができるパンツと、普通のシャツに、ちょっとジャケットを着せて、現代人「総司」の出来上がり。
昼から総司と彩乃を車に乗せて、近所のショッピングセンターに買い物に出かけた。前に乗ろうとする彩乃を後ろに乗せて、僕が一人で運転手状態。
実はこれには訳がある。しばらく車を走らせたところで、総司の顔色が悪くなった。
ほら来た。
「彩乃、後ろにビニール袋、乗せてあるから」
乗り物の開発と共に、乗り物酔いは始まったと言われるくらい、乗り物と乗り物酔いの関係は密接だ。
特に僕らの種族の場合は、耳もいいし、若干感度が上がっているから慣れるまでは、乗り物酔いが起こるだろうね。
「うっぷ」
ちらりとバックミラーを見れば、本当に総司は辛そうで…。仕方ない。車を止めるか。
回復しては、車に乗り、また酔っては車を止めて。普段だったら一時間もかからずにいける道でかなりの時間がかかってしまった。まあ仕方ないよね。




