第2章 現代探訪(3)
「捨てなくていいっていうぐらいと、あとはまあ、見えないところだったら素振りぐらいはしてもいいかな。教会堂の中だったら天井も高いし。できないことはない」
「心元ないですね…」
不安そうな顔で刀を抱きしめた総司の肩をポンと叩く。
「大丈夫だよ。この国は、今、凄く平和だ。若い女性が夜中に一人で歩くことができるぐらいね」
「え?」
「平和ボケっていう言葉があるぐらいだからね。後で街を見に行けば納得するよ」
総司がおずおずと口を開く。
「街に出ていいんですか?」
「え? なんでいけないって思うの?」
「いえ…まだよく分からないですし」
僕は思わず笑った。
「だから出たほうがいいよ。大丈夫。僕と彩乃がフォロー…えっと、助けるから」
不安そうな総司をソファに座らせたまま、僕は朝ごはんを作ることに決めた。
基本的に僕たちはこういう食事は必要ないけど、習慣づけておかないと、人間と一緒にいるときにボロが出るからね。
昨晩買ってきた卵に食パン。それに牛乳。甘いフレンチトーストでも作ってやれば、総司も気に入るだろうか。それともオーソドックスに食パンに目玉焼きを乗せて焼くか。
ふむ。
総司に聞いてもわかんないだろうしなぁ。まあ、聞いてみるか。
「総司、ふわふわして甘い朝食と、卵を乗せた小麦粉を練って焼いたものの朝食とどっちがいい?」
「え?」
総司が振り返る。
「それ、どういう比較ですか?」
ごもっとも。
「えっと。甘い朝食がいい? 塩気がある朝食がいい?」
総司はへにゃりと笑った。
「いくら甘いもの好きでも、朝から甘いのは…」
あ~。そっか。普通にホットケーキとか、ワッフルやフレンチトーストを朝食にするけど、和食に甘い朝食って無いよね。面白いから、甘い朝食にしよう。
僕はにやりと笑った。
「じゃあ、甘い朝食に決定」
総司が慌てて刀を持ったまま、台所の僕のところに歩いてくる。
「どうしてそうなるんですか。嫌がらせですか」
僕はひょいっと肩をすくめてみせた。
「現代風の朝食。食べたことがない味のほうが面白いでしょ」
「うっ…」
総司が詰まる。




