間章 目標作り(2)
「えっと。お兄ちゃんが言っていたんです。何かをするときに、小さな目標を一杯立てて、それで出来たらご褒美を自分にあげるんです。少しずつ大きな目標に近づくようにするんです。そうすると大きな目標がクリア…えっと…達成できるんです」
これはわたしが大学を受験するときに、お兄ちゃんに言われたこと。
「なるほど」
「だから、総司さんも目標を作りましょう」
「ふふ。それでは最終目標で、現代で仕事を得たら、あなたを妻にできるんですね」
「はいっ。総司さんと一緒にわたしもがんばって、わたしは総司さんを夫にできるんですよ」
総司さんが目を丸くした。
「おかしいですか?」
「いえ。そう…ですね。そうなりますね」
ちょっと考え込んでから、総司さんが微笑みながら答えた。
「じゃあ、最初の目標は何にしましょうか? 総司さん」
「そうですねぇ」
「一人で買い物するとか」
「あはは。そんなことでいいんですか?」
「あ、笑いましたね。意外と難しいかもしれませんよ? 買い物」
むむむ。と総司さんが唸る。わたしは笑った。
「嘘です。ちゃんと何を買うか分かっていれば、あの時代と一緒です」
「やっぱり」
「はい。でも買い物できたら、一緒に甘いものを食べましょう」
「お団子ってこの時代にもありますか?」
「ありますよ。もっといろんな美味しいものがあるんです」
「いいですね」
「ほら、ちょっとだけ目標に近づいた気がしませんか?」
「そうですね」
そう答えてから、総司さんがわたしの手を握った。
「あなたと一緒だったら、やっていけそうな気がします」
「やっていってもらわないと困ります。総司さんを夫にするんです」
「私は彩乃さんを妻にするんですね」
「はい!」
それから二人で思いつく限りの目標を作って、ご褒美を設定して、一緒にがんばりましょうと誓った。
きっと二人で一緒だったら、できると思うの。がんばれると思うの。
ね? 総司さん。




