表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300/639

間章  目標作り(1)

------------ 彩乃視点 -----------------


「とりあえず…僕はちょっと出かけてくるから。…夜の散歩。眠れないから、ちょっと現代の東京を楽しんでくるよ」


 そう言って、パタンとドアを閉める音をさせてお兄ちゃんが出ていった。


 散歩? 一人で? このタイミングで?


 なんか凄く不自然。


 リビングに残ったのは、ソファで隣あって座ってるわたしと総司さんだけ。


 現代のことを勉強しなくちゃいけなくなった総司さん。きっと不安に思ってるだろうなって思ったの。だから「大丈夫です。一緒がんばりましょう」って言おうと思って、総司さんのほうを向いたら、いきなり抱きしめられた。


「そ、総司さん?」


 ぎゅって抱きしめた腕がわたしの背中をさぐって、そして首を撫でて、頭の後ろに来たと思ったら、両頬を両手で挟まれる。


 首が動かせなくなって…真正面から目が合った。


 思わず意図がわからなくて、ぱちぱちと瞬きをしたら、笑われた。


「総司さん?」


 近づいてくる顔。キスされる…そう思って目をつぶったら、すぐに唇に温かい感触が落ちてきた。


「彩乃さん。がんばりますね」


「はい」


 総司さんがわたしの鼻に自分の鼻を摺り寄せて、唇同士が触れるか触れないかのところで、吐息で言葉をつむぐ。


「あなたと家庭を作るために…がんばります」


 その言葉が嬉しくて、ぎゅっと抱きしめ返す。


「彩乃さん。あなたとの子供だったら…きっととても可愛いでしょうね」


 総司さんと…総司さんとわたしの子供…。


 想像して、なんか胸がほんわりした。きっと一緒にいると楽しいと思うの。


 そこまで想像して、はっと気付く。


「総司さん…もしかしてプロポーズですか?」


「はい?」


 総司さんが少しわたしから距離を離して首をかしげた。


 あ、プロポーズって…日本語じゃないのかな…。


「えっと…総司さんがお父さんで、わたしがお母さん? …になるの?」


 通じたかな? 総司さんがぽっと顔を赤くした。


「そうですね。彩乃さん。わたしと…夫婦めおとになりましょう」


 古風な総司さんの言葉。優しい響き。


「今は…まだ甲斐性がありませんが…。いつかあなたを妻にしてみせますから」


「はい」


「待っていてくれますか?」


「大丈夫ですよ。150年ぐらい経っても、外見はあまり変わらないってお兄ちゃんは言ってました。だからいくらでも待てますよ?」


 わたしは総司さんを気遣って言ったのに、目の前の眉毛が下がる。


「そんなに待たせる気はありませんよ。そんなに待ちたいんですか?」


 慌ててわたしは首を振った。


「違うんです…。いくらでも待てますって言いたかっただけです。わたしも、すぐにでも総司さんの…」


 言いながら、なんか押しかけているみたいで恥ずかしくなって、続きが言えなくなってしまった。黙りこんで俯いたら、顔を上げさせられて総司さんが嬉しそうに、またキスをしてくる。


 唇の温かさを感じながら、ふと思い出した。


「総司さん」


「はい」


「目標を作りましょう」


 総司さんが怪訝な目をして見る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ