間章 末期(3)
「君が生きたいなら、助けるけど。一つ条件がある」
「なんだよ」
俺はピクリとも動かない身体のままで、青い瞳を睨みつけた。
「君は違う環境で生きることになる」
ああ? さっぱり意味がわからねぇ。
「俺はこの国の行く末が見てぇんだ。この国の未来を作りてぇんだよ。それが出来ねぇなら生きても意味ねぇだろうが」
青い瞳が嗤う。
「この国の行く末は見えるよ。未来も作れる」
じゃあ、いいじゃねぇか。文句ねぇよ。
「おう。さっさとやってくれ。助けてくれよ」
こうなったら相手が異人だろうと何だろうと関係ねぇ。助けてもらったらこっちのもんだ。
「ふーん。契約するんだ」
「契約?」
「助かりたいんだろ? いいよ。じゃあ、俺の言葉を繰り返して」
俺は言われるがままに言葉を繰り返し、俺の名前を教え、そして口から何かを飲まされた。血の味…だと思うが、味覚が馬鹿になっていて、よくわからねぇ。
「じゃあ」
ぐいっと男が容赦なく俺の腕をひっぱりあげる。ひでぇ痛みがした。
「いてぇじゃねぇかっ!」
叫ぼうとして俺の言葉は止まった。
俺の狭い視界の中で、男の口から牙が出て、俺の腕にめり込むのが見えた。
「な、何して」
やがる…と続けようとして、突然身体がバラバラになるんじゃないかってぇぐらいの痛みに襲われる。
いてぇなんてもんじゃねぇ。バラバラだ。
それなのに気絶もできやしねぇ。
ひでぇ。
身体中が熱い。
火をかけられたんじゃねぇかっていうぐらいだ。
そして身体が投げ出されるような衝撃を感じて、止まった。
「やあ」
何がなんだか分からなくて、身体を起こすと、青い瞳に黒髪の男が俺を見ていた。
「やあ、じゃねぇだろ。なんだよ今のは」
俺は眉を顰めて、男の胸倉を掴もうとして、身体が軽く動くことに気付いた。
「何をしやがった」
だが男はそれに答えず、青い瞳を細めると、唇の端を持ち上げた。
笑っているはずなのに、笑っていると思えねぇ。
そして俺に向かって片手をあげる。
「一族へようこそ」
はぁ? なんだ?




