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間章  末期(1)

----------土方視点---------


 遠くで鉄砲玉が飛び交う音がする。


 呻き声と、そして人が走り回る音。


 俺は死ぬんだ…。




 わき腹に灼熱の痛みが走ったと思った次の瞬間、俺は高い馬上から放り出された。記憶に残っているのはそこまでだ。


 気づいたときには、全身が痛い上に、身体が動きやしねぇ。落ち方が悪かったのか、手の先がピクリともうごかねぇ。


 もう死んでるんじゃねぇかと思ったが、それにしちゃぁ、この身体の痛みはなんだ。


 人間っていうのは、えらく丈夫に出来ているじゃねぇか。


 背中に地面を感じるから上向いた格好のまま倒れているらしい。だが目が開けられねぇ。

 音だけを聞きながら、俺は死を覚悟した。


 痛い身体のまま思い出すのは今までのことばかり。試衛館時代は楽しかった。それから京に行って、新撰組を作って。仲間がいて。統率を取るために俺はなんでもやった。鬼と呼ばれようと、俺たちの理想のために。


 そのために仲間すら手にかけた。まあ、この戦の合間も逃げようとする味方を斬ったから、変わってねぇな。


 伊東甲子太郎が新撰組を抜けて、それについていって結局殺す羽目になった平助。脱走して切腹させた山南さん。病気で逝った総司。船の中で死んだ山崎。


 死んだ奴らの顔が思い浮かびやがる。


 かっちゃん…。


 俺がとめなけりゃ、武士として切腹できたかもしれねぇのに。斬首とはすまなかった。こればかりは謝っても謝りきれねぇよ。俺ももうすぐそっちに行くからよ。そうしたらいくらでもなじってくれよ。



 しかし…死なねぇな。


 身体がいてぇし、動けねぇし、わき腹から血は流れてるのに、なんでこんなになっても俺、生きてるんだ?


 ああ、早く迎えに来てくれよ。かっちゃん。




 俺の耳から鉄砲の音も、人の声も消え、あたりが静かになった。戦は終わったらしい。俺は置き去りかよ。


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