終章 めでたし、めでたし?
現代に戻ってから、僕らはちょっとばかり大変だった。想像できるでしょ。総司だよ。
色々あって、とりあえずまだ色々とやらかしてくれるんで大変だけど。仕方ないよね。まったく違う環境だから。
でも、最近、少しは現代社会に慣れたんじゃないかな。
ちなみに僕らは、現代に戻ってすぐに新撰組のその後を手分けして調べた。
総司からも、皆が次々と死んでいく様子などを聞いたし、歴史にもそれが残っている。そして総司は近藤さんが死んだときのことは知らなくて、かなりショックを受けていた。
平助、左之、がむ新くん、斉藤、土方さん、島田さん、八十八くん…、みんな懐かしい。それぞれの死に対して冥福を祈った。
そういえば、僕らが新撰組を離れた直後ぐらいに、早太郎くんは亡くなっていた。池田屋の傷が元だ。こればかりは苦い気持ちだった。
もう一つあった。
あの蛤御門の前後、僕らの正体がバレた前後に、「軍中法度」というのを作っているんだけど、その中で「敵や味方の強い弱いという評価をしてはいけない」っていう一文がある。そこに「普通と違うだの、妖怪だの、不思議だのと言ってはいけない」というのが加えられているんだ。
これを読んだときには、ちょっと複雑な気分になった。あのときに僕が翼を広げたのは、複数の隊士が見ているわけで…。
土方さんたち、混乱を収拾するの、大変だっただろうな。
それから、僕は日曜日の牧師に復活した。
とにかく聖書の箇所とか、祈祷の言葉とか、色々忘れてて、調子を取り戻すまで大変だった。
ついでにちょっとした再会があった。
僕の教会に、和泉さんというご夫婦が来ていたんだ。旦那さんは四十代~五十代ぐらいの人で、奥さんは二十代かそのぐらい。下手をしたら十代じゃないかっていう、年の差夫婦だ。
でも仲が良かったので、教会でも熱心なクリスチャンのおしどり夫婦として有名だった。二人の間には小さい女の子がいて、一緒に教会に来ていた。
戻ってすぐの日曜日。
僕が教会のドアのところで、みんなが入ってくるのを歓迎していたら、この和泉さん夫妻が来たんだよ。
そして奥さんが僕を見て、にっこり笑って言ったんだ。
「我が主…宮月様」
びっくりして思わず言葉が出なかった。
そう。この夫婦、小夜さんと善右衛門さんだった。
彼らは僕らが時を渡るずっと前から、僕の教会に来ていた。
でも僕の反応がおかしいし、何よりも小夜さんとの契約が成されているふうが無かったので、人違いかもしれない…と思いつつ、通っていたそうだ。
150年という年月の中で、小夜さんは善右衛門さんにほだされて、夫婦となったらしい。実は成人して独立した子供もいると後で聞いた。
まったくびっくりだよ。
とは言え、今は幸せそうな二人を見て、僕は嬉しかった。
彩乃と総司は相変わらずだ。
総司は彩乃を放っておかないし、彩乃も総司と一緒に居たがるから、友達の間ではいつの間にか彩乃に出来た彼氏っていうことで、有名になってしまったらしい。一度なんか、彩乃の友達が押しかけてきて、総司のことを根掘り葉掘り聞くので彩乃が困っていた。
そのうち僕の教会で結婚式をしたいとか言うんじゃないかと思ってる。でも吸血鬼が教会で結婚式ってどうなんだろう?
まあ、いっか。僕が牧師だし。
それから、たまに父さんが来るようになった。どこの時代からやってくるのか知らないけど、死ぬ前の父さんらしい。いきなりぼんやりと現れるので心臓に悪いよ。まったく。
あとは…なんだろう。
戻ってしばらくしてから、総司のせいで事件に巻き込まれたけど、これはまたいつかにしよう。
とにかく僕らは僕らだからね。それはどこにいても変わらない。
終わり良ければ、全て良し。
要はこういうことかな。
------ And...they lived happily ever after.
(そして彼らは幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし)
The End.




