表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/639

第26章  お願い(3)

 じりじりと駆け上がっては伏せ、駆け上がっては伏せを繰り返して、山頂に近づく。言葉の通り、土方さん率いる軍勢が正面。がむ新くんの軍勢が左翼、左之のところが右翼という隊形で、じわじわと頂上を追い詰めていく。


 しばらくして、ぴたりと砲撃がやんだ。


「突っ込め!」


 土方さんの声が響く。


 そして皆が一斉に山に向かって走り出して、僕たちもその後ろについて走ったときだった。


「お兄ちゃん! 右!」


 彩乃が叫んで、僕が右を見ると、右の茂みの中からこちらに銃を向けた一隊がいた。待ち伏せされてたんだ。


 僕の後ろには近藤さんと総司。このままでは、右からの攻撃は防げない。僕が身体を張ったとしても、守れるのは一人きりだ。


 そこまで計算して、敵が引き金を絞るのが見えた瞬間、半ば自棄になって近藤さんたちの右側に、頭の部分を両手で守りながら、鉄砲隊の前に立ちはだかった。


 そして肩甲骨に力を入れて、翼を広げる。近藤さんも総司も守るんだったらこれしかない。死なないけど彩乃も守れるしね。


 あ~あ。とうとう正体、ばれちゃうな…。


 ぱらぱらと落ちる金属片。

 

「つっ…」


 あまりの痛みに声が漏れる。翼を撃たれるなんて初めての経験だ。体中から血が噴出して、そしてすぐに塞がっていく。


「み、宮月くん…」


「俊…」


 近藤さんと総司が息を飲む音が聞こえたけど、それを気にするよりもやることがある。


 左右に持った銃をそれぞれ片手撃ちにして、敵兵の戦力をそいだ。がうん、がうんと銃声が響いて、敵が次々に倒れていく。死んでるかどうか、よく分からない。とりあえずこっちを攻撃できないように撃つ。


 すぐに真横からも銃声が聞こえ始める。僕の意図を察したんだろう。彩乃だ。両手で銃を構えて、僕が教えたスタンディングポジションで、残っている敵に銃弾を打ち込んだ。


「俊…」


 総司の声がもう一度聞こえた。僕は銃で撃たれて傷ついた翼が癒えるのを待って、背中に畳み込む。


 上半身の着物…破けちゃったな。しかも血だらけ…。結構お気に入りだったんだけど。


 一瞬、そんな現実感のないことを考えて…。そして振り返った。


 目を見開いて僕を凝視している近藤さんと総司。


 ちらりと山の上のほうへ目をやれば、土方さんや、がむ新くん、左之、それから他の隊士たちも僕らを見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ