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間章  幹部会

---------- 土方視点 ----------


 文久三年初夏。ちょっと風変わりな兄と妹が隊士となってから、人がどんどん増え、壬生浪士組も大所帯になりはじめたころ。


「かっちゃん」


 俺はかっちゃん、局長の近藤の部屋を訪れた。かっちゃんは文机に向かって、何かを書いていたが、俺の姿を見てすぐに机の上を片付けて、こっちを向いて座りなおした。その間に俺は勝手に座り込む。


 毎晩のことだから慣れたもんだ。


 もうすぐ、他の連中も来るだろう。試衛館から一緒だった連中は、大体このぐらいの時間に、毎晩、かっちゃんの部屋におしかける。試衛館にいたときからの習慣だ。まあ、かっちゃんの顔を見ながら、みんなでいろんな話をしているのは楽しいしな。




 がらりと障子が開く音がして、次から次へと奴らが入ってきる。


「こんばんは~」


 にこやかに総司。


「どうも」


 山南さん。


 その後ろから、藤堂平助が転げるように躓いて入ってきた。慌てて山南さんが支える。


「左之、お前な、危ないだろっ! 押すなよな」


「わるいな」


「左之は早く入りたかったんだよな~」


「おう。俺はどこでも、入るなら早く。そんで長く居座るのよ」


 永倉新八のからかいに、色気を漂わせながら答えているのが原田左之助。




 めいめい座って、勝手なことを話し始める。まあ、いつもの光景だ。


「しかし、いろんな奴が入ってきたな」


 左之が言う。


「刀を握ったことが無い奴も入ってきてるぜ」


 と平助。


「こっちの動きを探るような奴は入りこんできてねぇだろうな」


 思わず口を挟むと、皆、一瞬考え込んでから否定した。


「あいつはどうなんだよ」


「あいつって誰です?」


 聞き返す総司に、俺は答えた。


「宮月」


 そういったとたんに、皆が呆れたような顔をする。なんだよ、この反応。


「ない。ない」


 平助が顔の前で手を振りながら言った。こいつ、手と一緒に頭も動いてやがる。そんなに否定したいか。


「そりゃないな」


 と、左之。


「なんでだよ。てめぇら、なんでそんなにきっぱり否定しやがる」


 俺の言葉に総司が答えた。


「だって、あの人、全然、こっちを探ろうなんていう行動ないですよ」


「ああ?」


「あいつらさぁ、朝稽古終わって、飯食った後、何してるって、洗濯してんだぜ?」


 平助が言うと、皆が頷いた。かっちゃんは、そんな俺らのやり取りを面白そうに見てる。


「洗濯ぐらいするだろうよ」


「違いますよ。毎日やってるんですよ。晴れてる日は」


 ああ? 大の男が毎日洗濯だぁ?


「そんなに何、洗ってるんだ?」


「一度着たら、二度目は洗ってからじゃないと着たくないんだと」


 左之が投げやりに答えた。


「そんなことしたら、毎日洗わねぇとダメだろ」


「だから、洗ってるんですって」


 総司が答える。


「それから掃除して、布団干してるぜ」


 平助が言った。


「俺の部屋、あいつらの隣じゃん。毎日、彩乃が部屋の中を掃いて、雑巾で拭いてるし。俊が布団干してる」


 どんだけ綺麗好きだよ。そりゃ。


「午前中か午後は私と一緒に見回り。見回っていないときは洗濯と掃除。全然、屯所の中のことに興味ない様子です。下手したら、近藤さんのお部屋がどこにあるかも把握していないんじゃないですか?」


 総司が言うと、山南さんも言う。


「ああ、そういえば先日、近藤さんに文を持って行くのに、道に迷っていましたねぇ。結局、私が受け取って、近藤さんに届けましたけど」


 飛脚から文を受け取ったはいいが、部屋が分からず、行き合わせた山南さんに渡したらしい。


「あいつが間者だったら、超凄腕か、バカだろろ」


 斉藤までが言った。


「あの女はどうなんだ」


 俺は妹のほうを思い出しながら言った。やたら綺麗な女だったが、なんか人形のようで今一つ俺の好みじゃない。


 俺の言葉を聞いた瞬間に、総司が即、否定する。


「ありませんね」


「なんでだよ」


「彩乃さんは天女なんです」


 はぁ?


 一同が思わず絶句して総司を見る。


「あんなに姿形も心も綺麗な人はいませんよ。あの人が間者なんてありえません」


 総司…、お前、頭が沸いたか。


 ごほんと左之が咳払いをする。


「あ~、まあ、俺もあいつはないと思うわ」


 左之はそう言って俺を見た。


「だってよ、全然男に媚びねぇの。むしろ避けてるし。あいつはおぼこだな」


 いや、そんなこと聞いてねぇよ。


「それによ。彩乃もアニキにべったりだから、屯所の中のこと知らねぇしな」


 と平助。


「じゃあ、何か? おめぇらは、あいつらのことを信用したってことか?」


 と俺が聞けば、ばりばりと新八が頭をかいて言った。


「別に信用したわけじゃねぇけどよ、疑うところが見えねぇんだ」


「それに、彼はよく野草を取ってきてくれるよ」


 源さん、井上源三郎さんまで、言い出す。


 …野草?


「彼らが来てから、お昼に一品、御浸しが増えただろ? あれは彼が取ってきてくれてるんだよ」


 ああ? あいつ、何やってんだよ。


 ぽんと肩に温かい手が乗った。


「トシ。いいじゃないか。いい仲間が増えたってことで」


 かっちゃんは気が良すぎんだよ。まあ、そこがかっちゃんのいいところだけどな。


 あいつに対して警戒していた、俺の緊張感を返せ…。いや、ここで気づいたからいいことにするか。


 俺は深いため息をついて終わらせることにした。



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