第24章 布陣(3)
僕が内心ため息をついて、やられるがままになっていると、すぐ傍で大きな物音が聞こえた。
「いい加減にしろよ」
低めに出したリリアの声。そしてドッと振り払われた人が倒れる。
「てめぇら、俺に手出しするとはいい度胸じゃねぇか」
うわ~。なんかリリア、嬉しそうなんだけど。台詞の最後に♪がつきそうだよ。暗いから人間には見えないだろうけどね。
どうやらリリアは男設定を守ることにしたらしい。絶対面白がってやってるよ。
一人の男を両手で掴むと、頭の上に持ち上げて落とした。もうお構いなしだ。
「なっ…」
リリアの周りにいた他の二人が怖気づく。あ、一人は今投げられて、気絶してる。
「痛い目にあいたくなかったら、とっとと行きやがれ!」
啖呵を切って、片足を踏み出す。その動作に、君は時代劇かっ! とか思いつつも、ま、リリアは楽しそうだし、こいつらのほうが悪いんだしな~ということで、僕は口を挟まないでおくことにした。
僕を押さえつけていた二人の手が緩む。
「彪之助が本気で暴れないうちに、逃げたほうがいいんじゃない?」
呆れつつも冷静に言うと、わーっと四人は逃げ出す。気絶した奴はリリアの足元に転がったままだ。
「リリア」
「何?」
超ご機嫌。
「総司がちょっとかわいそう」
「なんで?」
「男色だと思われる」
「ま、いいんじゃない」
リリア~。
リリアは総司に対して、可もなく不可もなく…。なんだか今一つリリアの気持ちが分からないんだよな。
「リリアは総司のことをどう思ってるの?」
僕が尋ねると、リリアが眉間にしわを作って視線を逸らした。
「あたし、可愛くないし」
はい?
「総司さんは彩乃みたいに可愛い女の子が好きでしょ?」
「いや、君も十分可愛いと思うよ」
僕がそう言うとリリアが睨んでくる。
「俊にい。いいんだよ? 別に妹にお世辞を言わなくて。あたしは彩乃みたいに『きゃっ♪』とかできないし」
いや、彩乃も別にそんなことしてないし。
「まあ、見た目は同じ人間だから、一緒だけど…。でも性格的に可愛くないし」
「リリア。それは総司がリリアをどう思うかっていうことだよね?」
僕がそう言うと、色々と並べ立てていたリリアが黙る。
当たり。自分の気持ちを言いたくないから、相手のことを色々言ってるだけだ。




