間章 滋養 その2(3)
「養生しておけよ」
平助がポンと肩を叩いてくる。
「ま、寝ていると毎日、彩乃ちゃんが来るからいいかもしれないけど、さ」
左之さんが意味ありげに笑う。曖昧に笑ってごまかしたつもりだけど、あまり上手くいかなかった。
「総司がいねぇと、朝稽古が静かでいけねぇよ」
「とかいいつつ、がむ新、いつも煩いよな」
がむ新さんが言って、平助が突っ込む。
「いや、俺だけうるせぇとか、ねぇだろ」
「土方さんがいるともっと煩い」
左之がそう答えて笑う。
「違いない」
平助も同意して笑った。
「じゃあ、私は土方さんと同類ですか?」
わざと拗ねたように言えば、
「自分で気付いてないだけで、稽古中の総司と土方さんは似てるぜ」
と左之さんに言われた。
そうなのか、自分でもよく分からないので、思わず首をかしげる。
「その癖、彩乃の癖だよな。首をかしげるの」
平助に指摘された。無意識に真似てしまったようだ。
「ま、仕方ねぇだろ。試衛館の連中は、多かれ少なかれ、近藤さんと土方さんの影響を受けてんだろうから、似てもくるだろうよ」
がむ新さんがそう言って立ち上がった。
「長居すると悪いから、これでけぇるか」
「おう」
左之も立ち上がる。
「じゃあな」
平助がにっと笑って立ち上がって、手を振った。
「早く治せよ」
そう続けられた言葉に、弱気な気持ちが思い出された。治るんだろうか…。しかし表情は変えないように気をつけたまま、微笑んで頭を下げる。
「お見舞い、ありがとうございます」
いいってことよ、と口々に言いながら三人は出ていった。
にぎやかな時間の後の、ぽっかりと開いたような胸のうち。今は悪いことは考えないようにしよう。俊がくれた干し肉を一口ちぎり口に入れた。
「しょっぱい…」
そして蒲団を頭から被った。




