第22章 池田屋事変(moonlight) (1)
池田屋…。ついに着ちゃったよ。かなりあたりは暗い。夜…何時ごろなんだろう? まだリリアの時間ではないから、夜中までは行ってない。
ぞろぞろと歩いていくうちに、僕らは編成を決めていた。
中に突入するのは近藤さん、総司、がむ新くん、平助。表を固めるのは僕と彩乃。裏が残りの四人。今日、名前を知った奥沢さん、新田さん、谷さんと、そして早太郎くん。
表から入っていくわけだから、裏は人数が多いほうがいいだろうという配慮だった。裏を仕切るのは早太郎くん。
「御用改めである!」
繰り返された近藤さんの台詞。これが最後だ。僕ですら多少は緊張するわけで、隣では彩乃がぎゅっと刀の鍔に手をかけた。顔もこわばっている。
「彩乃。緊張しすぎ」
僕はこっそりと呟く。一番後ろを歩いているとはいえ、今までとあまりにも違いすぎるからね。
「あ…」
そう言って、彩乃は刀から手を離したときだった。
「皆さま、御用改めでございます!」
そう叫ぶ主人の声が聞こえ、近藤さんが閉めようとした扉を押さえ込んで、ぞうりを擦って走りこむ音が聞こえた。すかさず総司とがむ新くん、平助も中に入っていく。
「行くっす!」
早太郎くんが残り三人を引き連れて、裏口へと走った。僕と彩乃は剣を抜いて、表で構える。中から逃げてくるのを押さえるわけだから、入り口へと身体を向ける。
どたん、ばたんという音が中からは響いてきていた。
「覚悟!」
「小手!」
「きぇー!」
掛け声。
「うわーっ!」
「ぐっ…。うっ…」
斬られたと思われる人の悲鳴に呻き声。それらの音が邸内を響き渡っている。でも表にはまだ出てくる気配がない。
いいよ。ずっと表に出て来なくて。頼むから中で決着してくれ。
そう願いながらも、僕らは刀を構えつつ、敵が出てくるのを待っていたときだった。
「お兄ちゃん!」
彩乃が真っ青になって僕を見る。
「何」
「総司さんの呼吸が止まった」
は?




