第21章 池田屋事変(daylight) (3)
大体、沖田総司役っていうのは、かっこいい俳優がなったりしてさ。売り出し中のハンサム系の俳優で。大立ち回りの最後に血糊を吹いて、ど派手に倒れる。おいしい役だ。
「あ、俊?」
僕はまだ部屋に居たところで、総司が障子を開けて入ってきた。ハンサム系? うーん。まあ、悪くはないとしておくか。
立ち回りは120%OK! って感じなんだけどな~とか、本人を前にバカなことを考え込んでいたら、総司が顔を覗きこんできた。
「大丈夫ですか? 巡察、もう一回行くんで、用意を…」
そう言った瞬間に、ダダダと足音がして、平助が飛び込んできた。
「みんな集まれってさ」
あれか。計画が分かったんだな。
うーん。彩乃は、総司について行きたいって言ってたし、僕らは総司と行動をともにすることが多いから、自動的に池田屋じゃないか…。嫌だなぁ。
ぶちぬきの部屋に集まる。四十人いないな。
脱走が相次いだし、山南さんは腕のことがあるせいか、最近はこういう場所に殆ど姿を見せない。その上、怪我や病気で来ていない人がいる。
結構、人が減っちゃったなぁ~と思って座ると、すぐに土方さんと近藤さんが入ってきた。
やっぱり計画が分かったってことだった。
京に火を放つという話が出たところで、皆がどよめく。ついでに僕も一応、驚いたふりをしておいた。さすがに知ってたらマズイよね。
「そこで一度祇園の町会所で集合する」
敵を欺くために一斉に屯所を出るのではなくて、町会所に集まって、そこから動くとのことだった。そして激しい戦闘になることが予想されるので、怪我人と病人は置いていく。屯所は山南さんに預けることになった。軽めの病人が留守居役で残される。
八十八くんもそこに入っていて、酷く残念そうな顔をしていた。山南さんも悔しいだろうなぁ。みんな行きたいよね。活躍できるかどうかは別として。
僕らはまず分からないように武器や防具を一度荷造りして、それを先に送り出す。それから隊士は少人数ずつ来いとのことだった。
こっちの人数が少ないので会津藩などにも応援要請をしたという。
解散して部屋に戻ろうとしたところで、総司に呼び止められた。
「俊」
「はい?」
「彩乃さんは…」
僕は仕方なく笑った。
もう笑うしかないよ。苦笑いになったと思う。
「来るって。絶対来るって言ってた」
総司も複雑な表情になる。
隊士の人数が足りない今、彩乃も貴重な人材だろう。でも総司としては呼びたくないだろうな~って気もする。
「会所で落ち合えるように、迎えにいくよ」
そう言うと僕は二人分の用意をして、屯所を出た。




