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間章  餃子

---------- 彩乃視点 -----------


 洗濯物をしながら空を見ていたら、綿菓子みたいな形が見えた。そういえば綿菓子、食べてないな…。


 あ、こっちの雲はエビフライ! エビフライなんてこの世界には無いよね。ハンバーグはこの前、お兄ちゃんが作ってくれた。あれは美味しかったの。また食べたいな。


「彩乃?」


 空をぼーっと見ていたら、お兄ちゃんがやってきた。音や匂いで分かっていたけれど、声を掛けられてから振り返る。


「何を見ていたの?」


 お兄ちゃんが訊くから、わたしは雲を指差した。


「あれ。エビフライみたいって思ってたの」


 とたんにお兄ちゃんが吹き出す。むっ。なんで笑うの?


「空を見てため息をついているから、何を想っていると思えば…食べ物かぁ」


 雲を見て、他に何を考えるの? 首を傾げれば、お兄ちゃんに頭を撫でられる。


「もう。髪の毛、ぐちゃぐちゃにしないで」


「はいはい」


 嫌がっても笑うだけなの。触るとちゃんときれいにしてた髪の毛が、ぐちゃぐちゃになるんだからね。やめてよね。


「あ~。あっちのは餃子みたいだな」


 お兄ちゃんの視線の先には、餃子みたいな雲があった。こうやってみると空の上はごちそうだらけ?


「そういえば、善右衛門さんのところに品物を卸している人が中国…えっとこの時代だとなんだっけ? まあ、あっちの人でさ。この前、餃子の話をしていて面白かったよ」


「何が面白かったの?」


「餃子のタネが現代と違うんだよね。豚肉なんて手に入らないから鳥で作るのはいいとして、他も代替品なんだよ。何を入れるって言ってたかなぁ。葉生姜に、大根」


「大根?」


「うん。それに三つ葉に長ネギ」


 うまく味が想像できない。それ美味しい…のかな?


「今度作ってみようか。小麦粉があれば、皮は作れるし。まあ、野菜と肉が詰まっていれば何をつめてもいいんだよ。ああいうものは」


 でたっ。お兄ちゃんの適当発言。こうやって適当に作って、たまに失敗しているの。内緒だけど。


 美味しいものが多いけど、謎な料理も多いんだよ。お兄ちゃんの料理。


「うん。いいかもしれないなぁ」


 あ、なんかスイッチが入ったみたい。美味しいといいな。きっとなんとかしちゃうと思うけど、でも謎な料理になっても食べてあげることにする。



 数日後、出来上がった餃子はわたしの感覚だと「餃子?」って感じの味だったけど、さっぱりしていて美味しかった。餃子じゃなくて、新しい料理な感じ。お兄ちゃんは餃子って言い張ってたけど。

 


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