表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/639

第20章  信じるもの(6)

 リリアと言えば…総司と彩乃の間も結構微妙な感じだ。あれ以来、彩乃はかなり総司を意識していて、意識しすぎるあまり、不自然なほどに避けているときがある。


 それからリリアがたまに夜中に一人で部屋を抜け出しては、どっかで時間をつぶして帰ってくる。時間にしたら十分から十五分ぐらい。言いたくはないが、トイレにしては中途半端だし、夜中という時間が気になるし。


 聞いても「ちょっとね」でごまかされている。


 朝食の時間…僕は斉藤の視線に気付いた。最初は僕を見てるのかなぁって思ったんだよね。でも視線をたどっていくと彩乃だった。


 つつつ…という感じで、こっそりと平助が寄ってくる。


「一が、彩乃を見てんぞ」


 やっぱりそうなんだ。


「どうすんだよ」


「いや別に」


「いいのかよ」


 うーん。


 僕が適当に返事をしていたら、煮え切らないのを見て平助は行ってしまった。


 僕としては斉藤の目つきが気になるんだよね。あれは総司が彩乃に向けるような目つきじゃない。どちらかというと仇を見つけたような…どこか憎しみとか、苛立ちが混ざったような目だ。

 


 そしてこのころ、元々密に会津藩本陣とは連絡を取っていたけれど、ことさら近藤さんは会津公に呼ばれていた。


 そんな中、皐月の下旬に会津肥後守ひごのかみの家来で、松田鼎という人が殺されて晒し首にされた。続けるように大阪では中川宮の家臣で高橋健之丞という人が、これまた殺された。幕府寄りの人間で、新撰組から言ったら味方側。


 多分言わないだけで、こっちも敵側をかなり殺しているんだろう。たまに真夜中に井戸で水を流すような音が聞こえることがある。かなり微かだから人間の耳だと聞こえないかもしれないけど…。


 京の街を巡察するときにも、ぴりぴりとした雰囲気が漂っていた。ここ数ヶ月が、かなり小さな事件ばかりだったので、空気の違いをなおさら強く感じる。


 僕の記憶が正しければ…来月は歴史の重大事件が起きる月のはずだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ