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第20章  信じるもの(4)

「正確に言おうと思ったら未来形と過去形を覚えればいい。さらに過去のある時点から今現在まで続いているっていうニュアンスを加えたかったらpresent perfect…日本語でなんだっけ? 現在完了形? それを使えばいいんだ」


「でも他にも一杯習ったよ? 過去完了形とか…」


「過去? ああpast perfectのことかな。うーん。まあ、次のステップとして使ってもいいけどね。実際、現代…僕らが居た時代のアメリカではpast perfectを使う人は減ってたよ。母国語として喋る人がこれだもの。イギリスではまだ使っていたけどね」


 僕は微笑んで問題集をポンと叩いた。


「前に見た彩乃の受験用の問題集にあったから出してみただけ。難しかったらできる範囲で書けばいいよ」


「それでいいの?」


「書くことが大事。間違っててもいいから、書いたり読んだり、本当は声に出すのが一番いいんだけどね。まあこの環境じゃ無理だから」


 僕は彩乃の頭を撫でた。


「ゆっくりやればいいよ。でも英語はできたほうがいいな。僕たちの叔母さんも叔父さんも日本語はあまり得意じゃないと思うし。それに英語と中国語はできると便利だよ」


「え? 中国語も?」


「うん。使用している人数が多い言語はやっておいたほうがいい。そういう意味で英語はイギリスが植民地を広げたから使用人数は多いからね。その後はアメリカが世界経済の中心になって、ビジネスの世界で英語が使われるようになったし。それから中国は領土が広い分、人口が多いし。あちこちに移住しているし。古くから日本に入ってきている分、知識があると日本の漢文を読んだりするのにも便利だよ」


 彩乃が難しい顔をする。


「大丈夫だよ。時間はたっぷりあるし。英語ができて日本語ができれば、中国語の文法はそんなに難しくない。発音はちょっと厄介だけどね」


 ぽんぽんと彩乃の肩を叩いてから立ち上がった。


「ほら。難しい顔してないで。食事の時間だよ」


 彩乃が問題集をしまいこむのを待ってから、僕たちは食事に向かった。


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