第20章 信じるもの(2)
「周りは海で攻めてこられないし、鎖国は天子様が決めたことですからね。攘夷こそが天子様のお望みなんです」
いや~、すでに黒船は来ちゃってるし。大砲も向こうのほうが強いし。結構、ヤバイと思うけどなぁ。鎖国。
でも心の声は置いておいて、僕は黙って山南さんの話を聞いた。
「鎖国は、粗法(先祖の法)であり、この日の本の揺るがしてはいけない法なんです。それを変えるなどということは飛んでもないことですよ。大体、この国は建国以来鎖国をしてきたのですしね」
ええ~?? 鎖国って、キリスト教締め出しのために始めたから…えっとキリスト教伝来は…彩乃の受験に付き合った覚えたよな。イゴヨクナン…で1549年? で、鎖国完成はヒトムサク…で1639年ってことは1600年の徳川幕府以降だ。
あれ?? ってことは、ここはパラレルワールド?
僕の混乱をよそに、山南さんは話し続けていた。
「それに開国を叫んでお上の御政道に口を出すなどとんでもないことですよ」
あ~。民主主義国家から来た僕としては、何も言えない。
でもここでは政治は政治家に任せておけ…というのが普通らしい。
「ねえ。そう思いませんか? 俊くん」
「あ~。そうですねぇ。そういう考え方もありますね」
どっちつかずの答えをしたんだけど、お気に召さなかったらしい。
「ダメですよ。君もしっかりと自分の考えを持たないと」
思わず苦笑い。
「そうですね」
また無難な返事をした僕に山南さんが、言う。
「俊くんも少し、朱子学や国学を学んだほうがいいですね。広い視野を持たないと」
何も言えず絶句した僕をどう受け取ったのか。
「まあ、若いですし。これから少しずつ勉強していきましょう」
と山南さんは締めくくった。
…すみません。僕、あなたよりカナ~リ年食ってます…。




