間章 第一印象
------- 土方視点 -----------
あの目を見たとたんにぞっとした。首筋が後ろがちりちりする感覚だ。
俺も人を斬ったことなら、何度もある。死んだ奴もいた。
だがあの目は違う。人を人とも思っていない。相当な人数を殺した野郎しかもてない目。人殺しの目だ。
次の瞬間その視線は緩み、あっという間に柔らかなものにすり替わった。
だが、あの目は忘れられるもんじゃねぇ。
「総司」
「はい?」
「あいつらから目を離すな」
「え? ええ」
総司の外見は穏やかだが、こいつの剣の腕は確かだ。
結局、そいつらは居座ることになった。敵となったら厄介だが、無関係ならいい。いや、味方だったらもっといいかと思った。
だが…。
「見込み違いだな。こりゃ」
「どうした? 歳」
かっちゃん…局長の近藤さんが俺の視線の先を見つつ、俺の呟きを拾った。
「いや、あれだよ。あれ」
そう。俺の視線の先には、例の男がいる。
いつぞやの殺気はどこへやら。平隊士同士の剣の稽古で翻弄されて、振り回されて、ついでにどうしようもない一撃を喰らった上に尻餅をついていた。
結局、あいつが見せた一瞬の殺気は、あれ以来拝むことはなく。
妹の彩乃はそこそこ剣を使えるが、それでも女だ。そしてあいつ本人は…。
「ダメだな。こりゃ」
「あ~。宮月くんだね。あれは酷いね」
かっちゃんが隣でおおらかに笑う。
「笑い事じゃねぇだろ。あんなんにハッタリかまされたんだぜ? あ~、腹が立つ!」
「そうかな」
「なんだよ」
「いいじゃないか。ハッタリ。それだけ度胸があるってことだろ?」
「あ~、まあ、そうとも言うか」
俺はぽりぽりと鼻の頭をかいた。抜刀した俺達に囲まれて、ハッタリかますとは、たしかに度胸があるか、単なる馬鹿かどっちかだな。
「それに…」
「ん?」
「案外、ハッタリじゃないかもしれないよ」
「あぁ?」
それだけ言うと、意味深に笑って、かっちゃんは木刀を掴むと自分も稽古に混じりにいってしまった。
かっちゃんも見たんだろうか。あの男の一瞬の目つきを。
ハッタリじゃなく、そして俺達の敵じゃねぇんなら、いいかもしれねぇけどな。
だけど、今見えているあいつは…。
どう見てもダメだろっ!
「てめぇ、なめてんのかっ! 腰入れろ、腰ぃ!」
おれはかっちゃんの後を追って歩きながら、怒声を放った。




