表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/639

間章  読書(1)

------ 土方視点 --------


「失礼します! 宮月様はいらっしゃいますか?」


 門前から声がしたかと思うと、ひそやかな足音がして宮月が現れた。門前の男は、背中に山のように本をしょってやがった。貸本屋というやつだな。


「あ、どうも! 続きですか」


 嬉しそうな顔をして、宮月が門前の男に声をかける。「はい」と返事をして、貸本屋が本の束を差し出した。


 そのうちの一冊はまだ封がしてある新品だ。


「封切なんで、ちょっとお高くなりますが」


 貸本屋が若干申し訳なさそうに言えば、宮月は「いえいえ、いいですよ」と言いながら本の束を受け取った。


 封切って言えば、あれだな。一番に封を切って読むから、ちょいと値段が高いらしい。だが、本好きにはたまらねぇんだそうだ。


 ま、山南さんの受け売りだけどよ。


「七日間ですよね」


「宮月様にはいつもご贔屓にして頂いておりますし、今回は量も多いですからお値段そのままで十日といたしましょう」


 そう貸本屋が答えれば、宮月が笑った。


「うわー。嬉しいなぁ。じゃあ、お言葉に甘えて十日間お借りします」


 さらに一言二言貸本屋と言葉を交わしてから見送って、くるりと後ろを向く。


「土方さん」


 うおっ! びっくりした。


 気付いているそぶりなんか、ちっとも見せなかったじゃねぇか。


「そんなところに居ないで、土方さんも本を借りればよかったじゃないですか」


 俺がいたのは、ちょうど柱の影で、まさかコイツが気付いているとは思わなかった。


 さすがだぜ。


「おめぇ、何、借りてんだ」


 宮月の傍に寄って、ひょいと手元を覗けば「花裘狐草紙」と書いてあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ