第19章 正体(2)
「なんで得意って思うんです?」
そう言ったとたんに、後ろから土方さんがポンと僕の肩を叩いた。
「もういいんだ。宮月。俺たちは皆、お前らをかくまうことに同意してる。もう正体をかくさねぇでいい」
はぁ? 僕は思わず血の気がひきそうになった。どういうこと?
「お前らの正体なんて、お見通しなんだよ」
平助の言葉に、皆が頷く。ちょっと待て。いつの間にバレた?
「隠しているのは辛かったですよね」
そう言っていたわるように声をかけてくるのは山南さん。
「水臭いですよ」
こういうのは総司。
「大丈夫だ。俺ら、ぜってぇ誰にも喋らねぇから」
頷きながら、がむ新くんも言う。
どこまでバレてる?
どれがバレてる?
吸血鬼だってこと?
現代から来たこと?
それともイギリス生まれで実は日本人じゃありませんでしたってやつか?
妹も善右衛門さんも話すはずがない。
っていうか、善右衛門さんは僕が吸血鬼ってことしか知らないし。だったら、なぜバレた?
僕は思わず黙って、マジマジと皆の顔を見つめた。
相手の持っている情報が分からない以上、こっちはヘタに情報を出さないほうがいい。それは情報戦の鉄則。
「いつから知っていたんです?」
僕は自分から情報を出さないように、言葉を選んで言った。
「年末かな」
土方さんが答えた。
「それなのに知らないふりをしていてくれたんですね」
「そりゃ、そうだろ。大切な仲間だからな。ま、俺が知ったのはさっきだけどよ」
左之が言う。
さっき知ってこの落ち着き具合? まだ仲間だって言える…。どういうこと?
年末から知ってたなんて…そんなそぶり、一つも無かった。年末に在った事を一生懸命に思い出す。僕らの脱走劇、それからクリスマス、そして年末の大掃除…。
僕らの正体がバレた可能性の高いイベントっていったら、僕らの脱走劇? でも普通の人間として逃げたよね?
力任せにやっちゃったのは、人間のぶつ切りぐらいだ。あれでバレた? それにしても…。
僕はぐるりと皆の顔を見回した。
どう見ても、僕に怯えや恐れを抱いている顔ではなかった。むしろ、何か納得しているような…。なんだろう一体。
不安よりも期待感という方が当てはまる表情。
僕らの正体を知って、そんな雰囲気になるなんて…それだけここの人たちの神経が太かったってこと?
もしかして僕が今まで心配してきたことなんて、単なる杞憂でしかなかったんだろうか。




