間章 逆鱗(1)
------- 土方視点 ---------
桜も見ごろと、源さんに、総司、平助を誘って島原で花見をしようとしたら、武田さんもついてきた。
武田 観柳斎。腕も立つが、弁も立つ。
ただ俺は少々苦手だ。新撰組に男色を流行らせたのはこいつじゃないかと思っている。
「千紅万紫楼」と書かれた看板を見ながら座敷にあがった。
「花は花でもこっちの花も呼ばねぇとな」
綺麗どころが居てこその花見だろうが。
さっそく女たちがやってきて、酌をし始めた。はんなりとした京言葉で話す女たち。見える場所に桜。いい具合だ。
食って飲んで騒いで、皆がぐでんぐでんに酔い始めたころに武田さんの声が響いた。
「あら、衆道(男色)は文化でしょ」
見れば平助に絡んでいやがる。平助はちっこいし、こいつの趣味というところか。平助は嫌そうな顔していやがる
「古来、色道は二道を極めるべしって言われいてたの。つまり女色と男色。ねぇ、土方先生?」
おいおい。俺に話を振るんじゃねぇよ。知らねぇよ。色道なんて。しかも酒が入るについれて、どんどん女みたいな喋り方になっていってやがるし。
俺は聞こえねぇふりをして、酒をあおった。
「もう…。藤堂センセ、興味ない?」
俺の無視をどう受け取ったのか、軽く流して、平助に絡みつく。
「おれ、男に興味ないし」
平助が武田さんから距離を置きながら言う。
「あら。試してみたら、病み付きになっちゃうかもよ」
「いや、試す気もないし」
がんばれ。平助。
心の中で謝りつつも、俺は傍で酌をしている女に流し目を送る。お、脈ありか。いい感じに頬が染めていやがるじゃねぇか。
「屯所だと藤堂センセも魅力だけど、アヤノスケくんもいいわよね。いつもお兄さんがくっついているから、機会がないのですけれどね」
そう武田さんが言ったとたんに、俺たちは一斉に酒を吹いた。




