第2章 成り行き任せのその日暮らし(5)
食事の合間に、いろんな人に紹介された。
近藤勇。この人はきりっとしたゴリさんっていう感じだ。土方さんとは違った感じで、また親分肌な人。なんかどっかの何代目~って感じ。
山南敬助。この中では小柄なほうだね。愛嬌がある雰囲気で、やさしそうだ。たしか総長とかになるんだっけ?
井上源三郎。外見上は一番年上かな。おとなしい無口な感じで、食事の間もほとんど口は開かず、周りの人の話を聞いているのがメインだった。
ここまでが、いわゆる試衛館一派(近藤一派)と呼ばれる人たちだ。
あとは芹沢一派。でもこの人たちは別なところで食事をしているのか、時間をずらすのか、僕たちが食べているところにはいなかった。
そしてもう一派、いるはずなんだよね。殿内義雄の一派。でも昨日も見ていないし、今朝もいないところを見ると、もういないのかもしれない。
殿内義雄は、結構初期に暗殺されている。そしてその後で、一派は離散している。
そう。卯月っていったら4月なんだけど、4月にしゃちゃ暑いんだよね。江戸時代って太陰暦のはずだから、暦がどっちかに一ヶ月程度寄ってるはずなんだ。遅いんだか、早いんだか。つまり現代でいう3月か5月ってこと。
感覚的には暑いから、きっと今は現在でいう5月ごろのはず。
自分が覚えている歴史が太陰暦なんだか、太陽暦なんだか、わからないな。
まあいいや。
この時代は、日本の歴史の中でもテロが多い時代だ。現代日本にいるとテロは中東の話って思うかもしれないけれど、実は日本でも結構あった。
爆弾は強力なものが発明される前だったから無いけど、放火なんていうのもテロの一部だ。
テロ対策も含めて、治安維持のためにいくつか組織が作られる。そのうちの一つが新撰組…と僕は理解している。
食べ終わって、白湯を飲みながらボーっとしていたら(貧乏だから、茶葉はないんだよ)、彩乃は総司に話しかけられていた。
剣術はいつから始めたか…とか、なぜ女の身で始めたか…とか。
いつの間にか、藤堂平助も、永倉新八も、原田左之助もいる。
なんというか、みんなニコニコしながら話しかけてるよ。
内心、穏やかではないけれど、ここで出て行ったら彩乃に嫌われるから、黙っていた。
すると僕の横にも人影。
視線を上げると、斉藤一の愛想の無い顔をあった。
「おまえ、剣術はどこで習った」
そう言って僕の前に座り込む。
「え? いや~。本当に剣術はやったことないですよ」
ごまかすように白湯を持ち上げて飲む。
「持ち方もめちゃくちゃだし、打ち方も知らん。だが、突きはできる」
見てるね~。この人。
「そうでければ、俺から一本は取れん」
「斉藤さん」
「なんだ」
「僕は本当に日本刀は扱ったことないです。竹刀は彩乃の相手を、この子が小さいときにお遊びでやったぐらいだし」
まあ、たまに今も相手するけど。形縛りなしで。
「見よう見まねですよ。
体術の師匠がね、剣の避け方は教えてくれたんです。
だから斉藤さんの動きが見えた。それだけですよ」
「体術も変な体術だな」




