第18章 恋の行方(3)
「恋をすれば、いつも一緒にいたくなるし、声を聞きたい、触れたいってなるのは自然のことだよ」
不本意ながら僕は説明を始めた。総司が動き出してしまった以上、彩乃にも状況を把握しておいて貰わないと、こんなことが次にも起こったら誤って殺しかねないからね。
「でも総司さん、何も言わなくて…凄い怖い顔して、いきなり抱きしめられて…。顔を寄せてきて…それでびっくりして」
「あのね。『今からキスします。いいですか?』って尋ねる男なんていないよ」
「いないの?」
「いない。絶対いない。雰囲気を読むんだよ。そういうのは」
「でも…総司さん、好きって言ってくれてない」
「言ってる。めちゃくちゃ、言ってた」
彩乃が驚いた表情で僕を見つめる。
「気付いてなかったかもしれないけど、総司は何回も君に言ってる」
「ほんと?」
「ほんと。この時代では好きとか愛してるとか、直接言わない。それでも総司は君に何回か、かなり直接的に好きって言ってるよ」
「気付かなかった…」
「そうだろうね」
僕はがりがりと頭をかいた。ああ、言いたくない。言いたくないけど、仕方ない。
「彩乃。僕は君の恋愛に口出す気は無いから。彩乃が幸せと思うんだったら、それでいい」
「え?」
「ああ、もう言わせないでよ。君が本当に、心の底から望むなら、別に総司と付き合ってもいいってこと」
言っちゃったよ。認めちゃったよ。この先、彩乃が泣くことは目に見えてるのに…。でも…心に従わないで後悔するよりは、従って後悔したほうがいいよね。
僕の言葉に、彩乃はほっとしたように微笑んで、頬がうっすらと赤くなる。
「でも、その前に君は自分の力を自覚しないといけない。ちょっと押しただけでも、力を入れただけでも、総司を殺す可能性があるんだ」
今度は逆に頬が青ざめた。忙しいな。
「それに僕たちの種族やら時空やらの秘密をどう隠すのかっていうのもあるよね。恋人となったら四六時中一緒にいたくなるでしょ? かなり注意して隠さないと。それからリリアは何って言ってるの?」
そう。ずっと気になっていた。彩乃とリリア。
どちらも同じ気持ちなんだろうか。
「リリアは…わからないの」
「どういうこと?」
「反対はしてない。でもリリアが総司さんを好きかどうかはわからないの。むしろリリアは斉藤さんが好きみたい」
は?
「なんで斉藤」
彩乃は小首をかしげた。
「よくわかんないけど…フィーリング?」
それこそ良く分かんないんだけど。
「わたしが総司さんを好きっていうのとは、ちょっと違うみたいで…。興味があるって言ってた」
なんか共鳴するところがあるのかな。
「頼むから三角関係とかは止めてよ。ややこしいから」
彩乃が俯いた。
「よく分かんない」
それ、僕のほうが言いたい台詞なんだけど。




