第17章 ミッションインポッシブル?(8)
さて。お付の人をつれて廊下を歩いていく春嶽さん。どうしようかな。
春嶽さんを説得するには、力を使えば一発だけど、僕は使う気はなかった。
歴史上でどうなっているのか知らなかったし、大きな流れは変化しないと、父さんは言っていたけれど、それでも僕が介入してどう流れるのか良く分からない。
会って普通に脅してみる。それで感じるところがあれば降りるだろうし、もしかしたら降りないかもしれない。それならそれでもいいと思う。歴史上、新撰組はここで無くならないしね。
僕は春嶽さんを天井からつけた。
見張りが一番少なくなるところ見計らって、天井から降りる。
そして頬被りをする。泥棒にしか見えないけど仕方が無い。本当はサングラスかなんかにしたいんだけど、無いからね。顔を隠すとしたら、これしかないわけだ。
そして静かに春嶽さんの後ろの二人に忍びよって、気絶させる。あ、殺してないよ。ある急所を叩くと、うまい具合に落ちるんだよ。ただし微妙な力加減が必要だけどね。
気絶した二人を支えながらしゃがみこむ。それと同時に、春嶽さんが振り返った。
気絶した二人を床に寝せて、前受身の要領で転がって、春嶽さんの前にいたお付の人も気絶させる。
そして後ろを振り返って、気絶した二人を見ている春嶽さんの首筋に短刀を当てた。
「静かに」
できる限り低い声をひそやかに出す。春嶽さんの心臓の鼓動が早くなるのが聞こえる。
「話し合いに来たんです。いや、警告かな」
「何を…」
春嶽さんは落ち着いて対応しているように見せかけている。かなり怖いと思うけど、それを見せないようにがんばってるよ。僕の前じゃ、心臓の音や汗のにおいから、恐怖心に駆られているのはバレバレだけどね。
「京都守護職を降りていただきたい」
「な…」
「今日のところはそれだけです。でも…降りなかったら…おわかりですよね」
そう言って、僕は春嶽さんの首筋から短刀を離すと、そのまま天井に張り付いて、その場を離れた。
出口を探して、とりあえず見張りを避けて、塀を越えてしまえば任務終了。
頬被りは取って、うう。寒い。
とりあえず僕は屯所に戻ろうとして、ハタと気付いた。
「しばらく、これで遊んでよう。うん」
任務中は帰ってこなくていいって言われたしね~。とりあえず夜は屯所に帰って、昼間はフラフラする。それがいいな。
ということで、如月の間ぐらいはのんびりすることにした。




