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第17章  ミッションインポッシブル?(6)

 僕の作戦としては、誰か偉い人を捕まえて、その人に春嶽さんのことを聞く。知っていたら会わせてもらうし、知らなかったら、知っていそうな人を紹介してもらう。


 題して『わらしべ長者作戦』。


 もちろん素直には喋ってくれないだろうし、僕のことを記憶されても困るから、会えるまでは力を使うことが前提だ。


 さて。誰かいるかな~。



 しかし…見事な襖絵だよ。金色に様々な絵が描かれている。それから天井と襖の間は透かし彫りされた壁。空気は遮断されないから寒そうだけど。でも彫りは見事だ。


 凄いね。国宝の中にいる感じだ。


 天井も凝っている。絵が描かれていたり、何も描いていなくても格子に渡してある木が美しい。


 あ、人の気配見っけ。一人…かな? いや、隣の部屋にも居そうだけど。まあ、ここから行くか。


 僕はそっと襖を開けた。襖の向こうは部屋で、もう一つ向こうに人の気配。畳の感触を足の裏に感じながら、部屋を渡って、そっともう一つの襖を開ける。


「誰?」


 誰何の声がした。若い男の声だ。声の感じから彩乃と同じぐらいかなぁ。


「どうも」


 僕はふらりとその人の前に、片手をあげて立った。力を使わなかったのは、なんでだろう。あまりにも警戒心が無かったんだよね。その男に。


「あなた、誰?」


 面長の顔に、高い鼻梁で、小柄な男性だった。うん。やっぱり彩乃と同じぐらいの年だね。思わずニコニコと微笑んで見せる。


「あ、僕? 通りすがりのもんです」


「通りすがり?」


「そう。春嶽さんに会いに来たんだけど、顔を知らなくて」


「知らなくて会いに来たの?」


「まあ、ね」


 そう答えると、彼はくすくすと笑う。なんか調子が狂うなぁ。


「面白もの着てるね」


 僕は思わず自分の服装を見た。まあ、綿入れの半纏に、綿入れのマフラー。雪だるまだよね。これ。


「寒くて」


 そう答えると、ますます笑う。その声に反応したように、隣の部屋から声がかかった。


「上様、どうされました」


 うえさま?


「何でもないよ。独り言だから放っておいて」


 そう答える。


「上様って呼ばれてるの?」


「うん。将軍だから」


 は?


「徳川家茂(いえもち)。知ってる?」


「あ~、聞いたことある」


 謀らずもこれって、拝謁ってやつ?


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