第17章 ミッションインポッシブル?(5)
僕は翼を畳んで(ちなみに彩乃が作ったスリット入りの着物だ)、それから手にもってきた綿入りの半纏を羽織る。そしてマフラーをしっかりと首に巻きつける。ちなみに草履は袂の中。我ながらマヌケな格好だ。
重いから持ってきたのは短刀だけ。物はいいから、何かあっても対処できるでしょ。
そしてゆっくりと外壁を飛び降りて、草履を履いて、入れる場所を探す。明り取り用の窓とかね。重いだろうけど、ひっぱたら多分…あれ? 開かない。うわー。どうしよう。
えっと、とりあえずもうちょっと周ってみるか。一応、警備の人間はいるけれど、どこを動いているか、僕からしたら丸分かり。なので、誰もいなそうなところを見計らいながら動いてみる。
さて、近藤さんの考えっていうのは、多分こうだ。
松平春嶽公が京都守護職なんて嫌だって思えばいい。つまり脅してくればいいんだよ。京都守護職やるんだったら命がないぞって。別に本当に殺さなくていい。手が届くことが分かればいいわけだ。
近藤さんは僕が二条城に忍び込むなんていう手段を取ることまでは想像してないと思うけどね。なんか勘が働いたんだろう。こいつにやらせてみようっていう。
むしろ僕がヘタを打てば、新撰組の存続はもっと危うくなるわけで。身分はばれちゃいけない。こっそり、でも脅すっていうのがいいことになる。
まあ、うってつけの人選だろうけどね。これが「殺してこい」だったら、絶対に僕はやらない。「脅してこい」っていうのが、絶妙だよ。まったく。憎たらしくなる。
あ、開けられるところ見っけ。よいしょっと。
「ゴトン」
そう音がして、明り取りの窓が上に開いた。身体をひねって、とりあえず中に入る。
うーん。ここ、どこだろう。
とりあえず草履を脱いで袂に入れる。うー。足が冷たい。一応、足袋を履いてるけど。
人の気配。僕は慌てて飛び上がって、天井に張り付く。
もこもこした半纏着て、天井に張り付いている図って、めちゃくちゃマヌケなんだろうなぁ。誰にも見られたくない。
「音がした?」
「はい。こちらから」
そう言って歩いてくる見回りの侍二人。僕が入ってきた明り取りの窓をチェックして、それから首をかしげて去っていく。よしよし。
とりあえず、場所の把握をしないとね。僕は音もなくもう一度廊下に降り立つと、足を忍ばせて歩き始めた。
しかし楽だよね~。センサーも無ければ、監視カメラも無い。見つかっても銃で撃たれる心配が無いし。見回りさえ気をつければOK。おまけにカギのかかったドアなんて稀。
現代から考えたら警備は穴だらけだ。これだったら進入までは楽勝だね。




