第17章 ミッションインポッシブル?(4)
「松平春嶽公が、京都守護職なんか嫌だと思ってくれれば良いんだけどね」
そう言われた瞬間に、近藤さんの思考が読めた。
はっとして近藤さんを見た瞬間に、僕を見ていた近藤さんと視線が合って、にやりと嗤うのが目に映る。
うわ~。気が付くんじゃなかった。
「お願いだよ。宮月くん。君ならできるだろう?」
「いや、勘弁してください」
「新撰組が無くなってしまうかもしれないよ?」
「いやいや。無くならないですから。多分」
「ねえ? 彩乃さん。新撰組が無くなって、みんなが路頭に迷ったら困るよね」
うわ。次は彩乃を巻き込んできた。
「いや、大丈夫だから。彩乃、騙されないで」
「騙すなんて人聞きが悪い。みんなが困るんだよ」
じっと聞いていた彩乃が僕の袖をつかむ。
「お兄ちゃんは、なんかできそうなの?」
そう彩乃が言った瞬間に、近藤さんが畳み掛けた。
「宮月くんなら、なんとかできると思うんだよ」
「そうなの?」
彩乃~。騙されちゃだめだって。
「そう。彩乃さんからも宮月くんに頼んでくれないかな。みんなが困るんだ」
「いや、彩乃、そんなことないから」
「お兄ちゃん、みんなを助けてくれる?」
彩乃~(泣)
「みんなを助けると思って。必要だったら屯所にはしばらくは帰ってこなくてもいいから。自由に動くのを認めるよ。ただし彩乃さんは屯所に居てもらうよ」
それって、人質じゃないか…。
にこにこと穏やかに笑う近藤さんが悪魔に見える。
「お兄ちゃん…」
心配そうに僕を見る彩乃。それはどっちを心配してるわけ? 僕? それとも新撰組のみんな? まったく。まいったなぁ。
「頼むよ」
近藤さんのダメ押し。僕は盛大にため息をついた。
そして今、僕は二条城の天守閣の上にいる。
さすがに昼日中に飛ぶ勇気は無かったんで、明け方を狙って、一番暗い時間に飛んで来た。
高い場所で外から来るなんていう発想は無いはずだから、一番警備の薄そうな場所を選んだわけだけど…失敗したかも。
だってさぁ、お城っていったら大阪城みたいのを想像するでしょ? 二条城は低いんだよ。周りだけ高いけど、真ん中の居住区っぽいのは低かった。
本当に面倒なことになっちゃったなぁ。
寒いし。




