第17章 ミッションインポッシブル?(3)
のんびりと数日過ごした後で、早馬が京から飛び込んできた。土方さんからの手紙を見て、近藤さんが顔色を変えて、考え込む。
「どうしたのかな」
こそこそと彩乃が僕に訊くけど、僕も思い当たる節がない。
「なんだろうね。わかんないな」
それっきり二人で黙り込んで、近藤さんの顔を見ていたら、近藤さんの視線が上がって僕の視線と合った。
あ、嫌な予感。
「宮月くん。お願いが」
思わず僕は片手をあげて遮っていた。
「嫌です。近藤さんのお願いは聞きません」
「いや、そう言わず」
「土方さんに入れ知恵したのだって近藤さんでしょ」
「いやいや」
そういうけど、絶対、あの土方さんの「お願い」は、近藤さんの入れ知恵だと思う。
「じゃあ、独り言で」
「嫌です。聞きません」
思わず僕は耳を塞ごうとしたけど、近藤さんのほうが早かった。
「新撰組の存続に関わる話だ」
「え?」
思わず耳を塞ぐのも忘れて、彩乃と二人で聞き返す。
「松平容保公が京都守護職を罷免されたよ」
「は?」
京都守護職っていうのは、新撰組を配下として動かしている役職名だ。松平容保公は会津藩の当主で、その人が京都守護職から下ろされたってことは、新撰組は会津藩預かりじゃなくなるってことで…。
「どうなるんです?」
「後任は前越前藩主松平春嶽公だそうだ。容保公は陸軍総裁職となられる」
「新撰組は越前藩が面倒見るということですか」
「どうだろうね。だけど我々には容保公にご恩がある。できれば今後も容保公の配下のものとして動きたい」
「はぁ。まあ、そうですねぇ」
「そこで、だ。我々が引き続き容保公の配下で動けるようにしてもらえないかな」
はい?
「君なら、なんか考えがあるだろう?」
「いやいや。マジで無理ですよ。なんで僕にそんなことできると思うんですか」
近藤さんが、じっと僕を見る。
「無理かな」
「常識的に考えて、無理でしょ。僕、一隊士ですよ?」
「宮月くん。どんな手を使ってもいいよ」
「いや、無理」
近藤さんから視線を外して、思わず天井を眺める。
「そこをなんとか」
なんで一隊士が、そんなことできるって思うわけ? 無茶振りもいいところだ。




