表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/639

第2章  成り行き任せのその日暮らし(3)


「なんだ…今の…」


 場からざわめきが聞こえてきて、土方さんが我に返ったらしい。


「勝負あり」


 そう判定してくれた。



 

「てめぇ、どこの流派だ」


 土方さんが睨んでくる。


「いや、流派っていうか、適当?」


「適当で、斉藤がやられるかっ!」


 ごもっともです。

 



 実際、斉藤一の動きも、僕が思っていたよりも早かった。紙一重で勝った感じだ。


 そして、次に試合としてやったら負けちゃうかな~なんて思ってる(笑) 片手だと力が軽くなるからね。突きならともかく、斬りおろすのには向かない。


 っていうか、今気づいたけど、負けて良かったんじゃない? 大勢の隊士の中に紛れ込む作戦でいこうとしてるのに、幹部に勝ってどうするんだよ。


 うわ。本当に今気づいたよ。


「もう一回…」


 と斉藤が言おうとしたところで、僕はすばやく頭を下げた。


「すみません! 実は剣術できません!」


 あっけに取られる皆さん。

 いや、別にこの際、僕のプライドなんてどうでもいいし。

 多分だけど、とりあえず職場確保は済んだし。

 捨て身戦法に出てみた。


「てめぇ。昨日のは与太か? じゃあ、今のは何だ? まぐれか?」


 土方さんが睨んでる~。


「いや~。体術なら得意なんですけどね~。剣術はやったことないんですよ」


 あはは~という僕の乾いた笑いが響く。

 

「体術は得意だと。新八!」


「あ?」


「おまえ、相手しろ」


 え~って不満そうな顔をしながら、永倉新八が出てくる。この人はどちらかというと、日本人らしい~顔した人だった。雰囲気は凛々しく。きりっとしている。


 僕は比較的細身だし、まあ、体術が得意って言われても、ピンと来ないんだろう。


 ケンカなれしてるな~。この人。土方さんの掛け声の後で、いきなりの右フック。

 つかみ掛かるかと思ったら、そういう出方するんだ。

 一瞬焦ったけど、そのまんま左手で掴んで、身体を使ってくるりとひっくり返す。


 落とすときには、頭を打たないように多少手加減した。

 そのまんまうつ伏せに寝せて、手首の関節を押さえる。こうしたら、もう動けない。


「なんだ、今の」


 目を丸くする土方さん。

 僕の下で、びくびくしてる永倉さん。

 あ、ごめん。

 慌てて、手を離すと、手首をさすりながら永倉さんが立ち上がった。


「今のは油断したけど、次はそうは行かないぜ」


 永倉さんが、いきなり足蹴り。これは半身で捌いて、後ろから肩を掴んで投げ飛ばして、片手を背中で押さえつけて終了。

 合気道の形の流用。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ