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第15章  酔っ払い(10)

 先を歩いていた総司と彩乃に追いつく。二人で上を見て、なにやら指差しながら喋っていた。


「何見てんの?」


 僕が問えば、彩乃が答える。


「あのね、星座の話をしてたの。あの三つある星のところ、あれ、ツヅミボシっていうんだって」


 ああ。オリオン座だね。


 ちなみにこの時代、空気が澄んでいるから、晴れてさえいれば、星が綺麗に見える。星座の勉強にはうってつけだ。


「あのツヅミの絞った部分の三つ星は、土用三郎っていうんですよ」


「どようさぶろう?」


 総司の言葉に、僕は聞き返した。


「夏の土用、夜明け前に見ると、あの三つの星が一夜に一つずつ昇ってくるのを見ることができるんです」


「へぇ。それでなんで三郎?」


「さぁ? 三人兄弟ですかね? 土用の日を一日目から太郎、次郎、三郎って呼びますよね」


 総司も曖昧なようだ。でもそう考えるのも面白いかも。


「総司は、家族はいるの?」


 僕が言うと、総司ははにかんだように微笑んで俯いた。


「姉が二人いますよ。親代わりに九つまで僕を育ててくれました」


「そう」


「元気がいい姉なんです」


「そう」


「なんでです?」


 そう聞かれて僕は焦った。別に特に理由がなくて聞いたんだよね。


「あ~。ほら、みんなが郷里に手紙を送るって言ってるからさ。将軍様の警護をしたって」


 ああ、と総司が微笑む。


「私の場合は、近藤さんとか土方さんが家族みたいなもんですから。手紙は出さなくてもいいかな。まあ、出すとしたら姉に出すぐらいですね」


 そう言って総司はもう一度空を見た。


「彩乃さん、あれ、門松星ですよ。ツヅミボシの上に並んでいる星があるでしょう」


 オリオン座の上のほうにある星を指さす。ふたご座だ。


「お正月のこの時期には、沈むときに縦に見えて門松みたいだから、そう呼ぶそうですよ」


 彩乃は一生懸命、総司の指先から示される星を見ている。僕はそんな二人を後ろから複雑な気持ちで見ていた。


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